お知らせ
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シンポジウム「時代に取り残された学校現場」その2報告
- 2023/04/05
21 世紀構想研究会創設 25 周年記念・教育再生
シンポジウムーその2
「時代に取り残された学校現場 中・高校教育施策の立て直しを考える」
開催日時 2023 年3月 11 日(土)午後 1 時半-同4時
会 場 日本記者クラブ 10 階大ホール
YouTubeで公開:https://www.youtube.com/watch?v=ye2XYLLWzco
パネリスト
安西祐一郎 公益財団法人東京財団政策研究所所長
漆 紫穂子 品川女子学院理事長
工藤 勇一 横浜創英中学・高校校長
モデレータ
橋本 五郎 読売新聞社特別編集委員、日本テレビ系報道キャスター
挨拶 馬場錬成(認定NPO法人21世紀構想研究会理事長)
21世紀構想研究会創設25周年記念シンポジウムの第2回目を開催いたします。教育再生の課題と今後の改革へ向けた提言などを討論したいと思います。今回は、中学・高校教育の課題とその取り組み等について、3人のパネリストの先生、それから橋本五郎さんのモデレーターによってパネルディスカッションを展開したいと思います。
世界は今、想像を絶する速さで変革しております。あらゆる従来の価値観は崩れ、新しい価値観を創造する時代になっております。そのスピードは驚異的でございます。教育もまた例外ではなく、大変革の時代を迎えています。
最初に3人のパネリストからプレゼンテーションをお願いします。
漆紫穂子氏:品川女子学院を経営しております、漆紫穂子と申します。今日はお話しすることが三つあります。
「教育政策に足りないこと」「学校は変わる」「学びは変わる」ということです。
私どもの学校は、98年前に品川に創立いたしました女子校です。私は女子教育の世界に35年以上おります。そういう中で、生徒たちから教えてもらったことを、さまざまな書籍などにして皆様にシェアさせていただいております。
そしていろいろな公職にも就かせていただき、そこで気が付いたことがあります。それが、今の教育政策に足りない4つのことということです。今日のテーマは、時代に取り残されるということですが、そこにはどういう問題があるのかということを幾つか気付いたことがございます。
この4つは、産経新聞に教育連載をしており、学校のホームページに記事内容がリンクされております。そこで私が自分の責任として感じましたことは、教育政策、教育現場、研究の知見の三つをつなげる必要性があるということです。いろいろな場面で教育に対して「私のやり方は」とか、「うちの孫が」というような発言が多く、教育は誰でも語れることを感じました。
みんなそれぞれに思いがあるために、主観的な議論になりやすい。教育現場もある程度定量分析をして、データでお互いに話していくということをしないと、積み重ねができないかなということを考えました。
そこで責任感を感じた私は「私がやらなきゃ誰がやる」という感じで、57歳で大学院に行き、分析の勉強もいたしました。統計だけで100時間ぐらい勉強して論文を書きました。
このとき感じたのは、教員の働き方の改革と生徒の問題がごっちゃになりがちだなということだした。教育の週休2日制が、いつの間にか学校5日制になり、ゆとり教育になり、改善への経験を経ながら教員の働き方改革が続いている。例えば部活の縮小につながっていくというと、部活で得られる能力が何かという分析とは別なんだけど、一緒になっている。
たとえば、部活でどんな力が身に付いているのかとか、子供たちの能力を伸ばす、そして先生たちの働き方改革も両立できるような部活の改革というのはどんなものなのかというようなことを訴えました。
2つ目は、学校は仕組みを変えられるということです。私がこの学校に来るのは三十数年前の、ちょうど平成と昭和の間ぐらいだったのですが、写真で見るような状況でした。
中等部の1学年ですが、5人になってしまった時期があり、経営していくのが難しい状況になっていました。そこで、学校の仕組みを変えました。その結果、私立中学ブームがありまして、応募者55人あったんですが、そこから改革して1,800通近くの願書が来る学校になりました。
そのときに「変えなかったこと」があります。
仕組みを変えれば、現有勢力でも学校は変わるということを実感しています。私の尊敬する工藤先生が、公立の学校を本当に改革なさって、それを今、国に広くシェアなさっているということからも分かるように、やっぱり、やり方次第だなということを私も実感をしております。
私たちが大事にしてきたのは、女子の教育です。なぜ今も女子の教育をしているかというと、今の日本だからこそ必要だと確信をしております。このままいくと人口減少ということになっていきます。しかし、女性がまだまだ働く余地があるというのが、日本の含み資産だと思います。男性と同じぐらいに働けば、まだ労働力がキープされるというのが日本の現状です。
こうした女性を育てていくというミッションのために続けていきたい。さらにもう1つが、マイナスの理由からですが、今、これは一番下の子が幾つのとき、お母さんがどのぐらい働いているかというグラフです。
2010年と、上の線が2018年で、働くお母さんは増えている。しかし、変わらないことがあります。正規雇用はまだまだ男性の何分の一という状態です。だからここから先、女性にチャンスがある。また、それをしないと国がもたないというプラスの面からも、それからまだまだこの過渡期が続くであろうというマイナスの面から考えても、自分が子供を生み育てるということと仕事をするということを選べることができる。
両立または分担ということを選べている人はどういう人かと考えますと、やはり専門職や資格職がまだまだ女性の場合は有利です。ここが男の子と女の子の違いということで、女の子こそ学歴が大事。しかし、その学歴は、学校名ではなく学習歴であるという考えに基づいて、「28Project」というのを学校の柱にしています。
女性の28歳は、どういう年齢でしょうか。平均出産年齢の30歳を前に、仕事と子育て、どうするかなと迷う年齢だと思います。私どもの世代のときは、どちらかを諦めざるを得ない選択が多かったのですが、今はこれがしっかりとスキルを付けていけば両立ができるようになってきています。
ということで、私たちはこの28歳の未来から逆算して、もっとその先から逆算する教育をしています。そして、それに基づいて、中1ではデザイン思考とか、中2では日本文化を知るというような流れで、学校の教育を組み立てていっています。
例えばアントレプレナーシップ0から1をつくるということが、特に女性がやると、レバレッジが効きますので、この起業体験プレミアムというのを2006年ぐらいから始めて、実際に商品開発をしたり、中にはNPOを設立したり、こういう子たちも出てきています。
そして、こうした事業というのはまだまだカリキュラム上は一部でしかできないので、総合学習の時間というのを活用しておりますので、ほんの一部なんですが、それがモチベーションになりまして、子供たちが自ら学ぶ力というのを身に付けていっています。
その結果、私どもの学校、もともとは結構文学部系統が多かったんですが、今は未来から逆算して、多様な進学先へと進むようになりました。でも、私たちはこれがいいと思っているけれど、本当にいいのかなとしいうことを、卒業生で検証もしてみました。
実際にアンケートを取ったところ、自己肯定感が高いとか、これはWebアンケートで一般の方と比べますと、職業満足度も高いというようなことも出てまいりました。これも別に、いい仕事についているという意味ではなくて、自分が満足する仕事を選べているということだと思います。
さて、最後、少し駆け足になりますが、「学びは変わる」ということをシェアしていきます。
学びは変わるには4つのキーワードがあると思います。
「ライバルは世界にいます」。2012年、私がサウジアラビアに行ったときがありました。
この国は女子が教育を受けられなかったのですが、人口の半分は女性なので、女子教育が突貫工事で行われていました。これは共学の大学ですが、理系の人材を増やしたいということで、1、2階が男性校舎、3、4階が女性校舎ということでした。くもりガラスの向こうで女性も授業が受けられる。なおかつ、幼稚園から大学院まで学費は無料。女性が留学するときは、男性家族の付き添いの分まで全部国が出すというようなことでした。日本の教育費の問題もとても感じました。
そしてこれは、10年近く前オランダに行ったときのものですが、小学生が既にもう選択制の授業で教室の前に並んでいます。そしてそれぞれ個別に学んだことを共同学習でシェアしていく。個別と共同ということも10年前から始めていたわけです。
そしてさらにこれがここからのキーワードになると思いますが、「集合知」ということで、これはSNS上で生徒たちがノートを共有しているところです。ノート貸してというのは、今はこうやってみんなでやって、みんなでこれを上書きしていく。そういう集合知の時代に入ってきました。気前のいい子に光が当たる時代だと思います。知識はシェアの時代です。
最後が、「非認知能力」に私の学校はかじを切っています。仕事の評価につながる四つのモラルという調査があります。4つのスキルを付けた子は、1個もされていない子に比べて年収が86万円違うという調査があるということです。もちろんこれは一例ですけれども、今までの読み書き・そろばん、リテラシーの時代から、知識の土台の上に何をするかという行動特性、コンピテンシーの時代に変わったということをシェアしたいと思います。
今日はこうしたことをベースに、気養育政策に足りない4つのことということを、次のパネルでもお話しできたらと思います。ありがとうございました。