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日中科学技術協力は進めることができるのか? 報告3

2021/09/22

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基調講演の2 沖村憲樹

世界に例のないハイテクパーク政策

1978年に鄧小平主席が号令をかけた改革開放政策で、沿海部を中心に多くの経済特区が設けられました。重化学工業を中心に、この特区に世界の工場といわれる産業が発達するわけですが、発展を加速化させるため、中国は「ハイテクパーク政策」を進めます。1984年に沿海部14都市に、「国家ハイテク産業開発区」を作ります。

北京市郊外の「中関村」もその一つなのですが、このハイテクパークは、国務院、各役所から各地方自治体へと拡大、中国中がハイテクパーク化して、先端産業を育ててきたわけで、ここに一覧があります。 

国家級のハイテク拠点は10種類あります。一番典型的なものが、国家ハイテク産業開発区で、156カ所にあります。入居企業が10万、従業員が1940万人、総売上が933兆円、年成長率が11%になっています。他に大学専用のものとか、バイオ分野とか、いろいろな種類の国家ハイテクパークが合計10種類、1907か所に設置されました、同時に地方自治体も2000以上のハイテクパークを作っており、中国の科学技術政策の重要な柱になっています。

 人材育成強化が中国発展の基盤

科学技術の水準の向上には、人材の育成が非常に重要ですが、中国も「中国教育現代化2035」という、2010年から10年間の基本計画を進めています。

予算総額も2019年は91.4兆円。5年間で30%と、急成長しています。 

初等中等教育では、小学校3年から全国の都市で、英語教育、コンピュータ教育、理数教育進め、非常に充実した内容です。その結果、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)では、中国の主要都市が各分野で第1位を取っている。それから、「数学オリンピック」でも、主要な分野で中国が上位を占めていて、中国の初等中等教育は着実に成果を上げています。 

大学では、学生への支援が厚い。中国では、ほぼ全部の大学が国・公立大学で、寮費、学費を含めて、必要な費用は年間36万円。ほかにも各種の奨学金があり、全寮制でアルバイトをせず猛烈に勉強する体制ができています。

一般的な家庭の優秀な生徒は、漏れなく進学できるというシステムができてる。そして、日本では博士課程の大学院生からも授業料を徴収しますが、一方の中国では、博士課程には一人50万円の支給があり、優秀な人材資源は漏れなく集める、という国家システムができあがっています。

先端知識を習得した海外留学生の中国帰国

同じく、留学支援、海外招聘、グローバル化政策も中国の特色です。

鄧小平が1978年に留学を奨励して以来、40年間で520万人が留学し、313万人が帰国して、今日の中国の発展を支えています。

現在、年間約71万人の学生が海外に出て、8割が中国に戻ってくるといわれています。留学先は米国が一番多く、米国に行った中国人学生の5157名がドクターを取得しており、日本の92名とは大きな開きが出ています。

優秀な中国人学生にはアメリカで最高の教育を受け、資格を取って中国に戻り、中国に貢献してもらう、このための国家的な戦略を進めてきました。

中国科学院が1994年に始めた「百人計画」は、国外にいる中国人研究者を中国国内に誘致、優遇する、海外人材呼び戻しプロジェクトです。また「千人計画」というは、支援対象を外国人にまで広げ、国籍を問わず優秀な人にはどんどん来てもらえるよう、破格の待遇で中国に呼び寄せるプロジェクトです。各国の先端技術情報の流出問題として、これは国際的な政治問題にもなっています。

中国科学院以外も、各地方自治体、企業などが「呼び寄せ政策」を取った結果、530万人中313万人が中国に帰ってきたというデータがあります。

同時に、中国には「外国人専門家局」という、非常に大きな組織があって、年間5万人の優秀な外国人を招聘しており、現在、50万人が中国に滞在して、中国の発展に貢献しているわけです。

このようにいろいろな政策を取って、派遣し、戻す。外国から優秀な人を招くというような政策を取っているわけであります。

 

つづく