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日中科学技術協力は進めることができるのか? 報告4

2021/09/24

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基調講演の3 沖村憲樹

 政策遂行と継続性を維持する科学技術政策

評価額が10億ドルを超える未上場の優れたスタートアップ企業を「ユニコーン企業」といいますが、中国は、米国に次いで122社あり、日本のユニコーン企業は7社です。

AI(人工知能)の新規企業を創設した人のデータを示します。外国からの帰国した中国人の方が起業した数字の上昇を見れば、中国のグローバル政策がいかに成功しているかが見えると思います。

 建国以来重視する科学技術政策

建国以来、中国には「科学技術の遅れで国が敗れた」という認識があリ、周恩来氏の国家発展スローガンや、鄧小平氏の「科学技術は第一の生産力なり」という言葉に現れています。

現在、中国科学技術部はスタッフ数7000人、1.2兆円の予算を持っております。中国科学院は世界最大の研究機関で、104の研究所に12万人の職員がいて、世界最高水準の論文をています。また、科学広報、普及活動を担う「科学技術協会」は、1000万人の会員を抱える膨大な組織です。

科学技術関係の組織は中央省庁のほかにも、「科学技術庁」という名称で、中央から地方まで一貫して科学技術行政を進める膨大な組織があって、二つの法律がこれ支えています。

1995年の教育法で、教育投入額のGDP費は常に増加させることを規定しています。

また、科学技術進歩法は、海外に派遣した人材に帰国をうながし、研究開発業務に従事させることを奨励していますが、この予算の伸びもGDP以上に増やすことになっていて、今後の成長を担保しています。

 教育と科学技術予算は日本の20倍

中国は2019年、教育と科学技術の予算は計116.3兆円です。日本は6.3兆円ですから、約20倍の予算をこの分野に注ぎ込んでいます。

これが長期的に続くと、どうなるか

リチャード・クーさん(野村総合研究所主任研究員)は、経済成長と科学技術投資は相関関係にあると指摘しています。また豊田永康・鈴鹿医療大学学長は、研究開発のいろいろな指標と、経済成長は密接な相互関係があり、日本は、「研究開発投資をしないから経済成長しない、経済成長しないから研究開発投資がうまくいかない」という悪循環に陥っているとしています。

世界中の主要なシンクタンクの2050年までの長期予測をみると、1位になるのが中国。アメリカはその下、2位になったり、3位になったりという評価になり、これがアメリカ等との国際的な摩擦の背景にあります。

こうした資料から類推すれば、中国は2050年には世界1位、日本のGDPが6倍から12倍と見込まれるなか、中国の科学技術予算は40倍から80倍と、大きく水を開けられます。その結果、世界最高の研究水準、優秀な大学研究機関、教育水準、優秀な研究者群が、中国にそろうことになってしまう。日本には手が届かない国になる可能性があるわけです。

 幅広く日中交流を展開するべき

こうした状況を考えれば、日本は産業レベルだけでなく、中学、高校、大学、研究機関、産業界、さまざまな階層、ルートで、幅広く交流をする必要があるといえます。

これを進めるために、2014年「さくらサイエンスプラン」というプログラムを立ち上げました。馬場先生や倉澤先生にもお手伝いいただいたのですが、これまで中国から1万人の高校、大学、研究機関の方を招いて、日本の高校、大学、研究機関と共同の作業を続けています。新型コロナ感染症で一時、中断していますが、今後も引き継き、幅広い機関が、幅広い分野で協力していく必要があると考えています。これは、中国側でも同じ意思があるわけですので、ぜひ交流を広げて行きたいと思います。

つづく