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知的財産を巡る日米中の争い、巻き返せ日本 講師 荒井寿光 その3(最終)

2022/03/11

荒井寿光さんの講演、最終回は日本の知財について課題を出しています。

日本の知財は明治以来、日本の発展に大変貢献してきました。しかし1980年代にアメリカに叩かれ、1990年代にはあまり元気がなかった。馬場さんと一緒に、知的財産国家戦略フォーラムをつくり、知財立国100の提言を出しました。それをもとに、小泉首相が知財基本法をつくり、総理大臣をヘッドとする知財戦略本部ができ、それから、知財高裁もつくって、知財立国の体制を作りました。

あれから20年、日本はアメリカや中国に比べて知財立国の推進に苦労しています。新自由主義という考えで、政府は何もしなくて民間企業に任せればいいという考え方が普及しました。企業もグローバリズムで、外国へ行って工場を作るのがいいということで、中国やアジアに海外投資して、国内の研究開発投資をあまりしなくなりました。これによって、日本の企業は弱くなってしまった。

二つ目は、大学改革や司法改革を進めようとしたのですが、大学でどんどんいい研究をしてくださいという話が、どうもそっちではなくて、大学人はどうも心配だからしっかり管理しようとか、そんなような議論のほうに行っているように見えます。

       

司法改革については、裁判所や弁護士は、改革をしなくても良いと考える人が多く、司法改革は進んでいません。                                  

今経済安全保障ということから、世界中が知財を重視するようになりました。日本も独自技術の開発をして、科学技術立国にする、大学改革をする、大学ファンドをつくってやるということです。日本人のいい創造力を発揮し、いい研究をすればいい特許が出てくるということです。

   

ところが産学連携はまだまだであります。ノーベル賞をもらった本庶先生のお陰でオブジーボなどがんの薬が出て、がん患者は助かっています。しかし小野薬品が妥当な発明の対価を払ってくれない。本庶先生に言わせれば、発明は本庶先生がやり、実用化したのもアメリカのブリストル・マイヤーズだ。さらに商品化したのがメルク社ということです。アメリカの会社が実用化し、小野薬品は間に入って金ばっかりもうけていると言っているようです。

発明の対価に関し和解しました。小野薬品は50億円を本庶先生に払うことになりました。さらに大学に230億円を寄付することで決着しましたが、両方とも不満な状態で終わったようです。大学の先生と日本の企業が力を合わせて、研究開発をするようにすべきです。

技術の流出防止ですが、今はサイバーで盗みに来ます。これをなんとか防止しないいけません。非公開特許制度、これは秘密特許制度ですが、外国にはありますが、日本にはない。これを日本に作るようになりました。

  

データのフリーフローですが、データの取引も自由なほうがいいという発想で、進めていますが、貴重な資源であるデータは日本がきちんと管理すべきです。

コロナの問題ですが、国産技術開発に一生懸命力を入れていますが、ワクチンも治療薬もなかなかできません。それならば、ライセンス生産方式にしたらどうかと言う意見です。インドはいつもアメリカ、ヨーロッパでできた医薬品を、ライセンスをもらって作り、それを世界中に輸出してます。

半導体のように、アメリカで基本特許ができても量産化で遅れたものは日本で実用化して、世界に普及したわけです。日本も国内開発に加えて、ライセンス生産方式も並行してやれば、もっと早くワクチン接種が出来ると思います。

日本はライセンス料を払って生産をすることは大事な意義あることだと頭を切り替えたら良いと思います。製造業でも日本は外国の技術のライセンス生産により、世界中の人に良いものを安く提供しました。

知財立国とは、日本人の創造的能力を発揮しようということです。日本からいい発明を出す、いい著作物をつくる。そうすることによって、世界の文明に貢献することができる、これが知財立国の考えですから、巻き返す必要があります。

終わり