お知らせ

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第132回・21世紀構想研究会報告

2017/03/09

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  第132回・21世紀構想研究会は、3月6日(月)開催され、石川正俊教授(東京大学 情報理工学系研究科・研究科長)が「知能システムの未来」とのタイトルで講演をしました。

 21世紀は価値を想像する時代

 AI(Artificial Intelligence)の世界は、ロジック系とリアルタイム系に分かれていますが、石川先生の研究は、五感の工学的再構成を目指した「センサ フュージョン」の理論とシステムアーキテクチャの構築と高速知能ロボットへの応用に関する研究です。

 特に、視覚センサと触覚センサによるセンサフィードバックに基づく高速知能ロボットの開発と応用による新規タスクの実現では多くの優れた成果を出しています。

   20世紀は新しい真理の発見が学問の主流でしたが、21世紀は新しい社会的価値の創造であり社会との連携による独創的な成果を発信することが重要だということです。

  石川研究室は、日本の製造現場で蓄積されてきた伝統的に信頼性の高い製造技術、産業用ロボットの信頼性などの強みを生かし、高速センサ技術、センサフュージョン技術の構築を目指して研究に取り組んできました。

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  価値を創造する課題の設定

 たとえば価値創造型課題の設定をあげると、あるシステムがあるとよいと考えたとき、このシステムを実現するには新たな技術が必要だが現状ではその技術がない。それができれば、新たな機能・価値が実現する。そのような設定が重要だと提起しました。

 従来は、必要性がないとかマーケットがないとか要求仕様も未確定であり成功するかどうかわからないという理由でプロジェクトは通りませんでした。

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 しかし、実際には多くのモデルで新規分野を創出してきました。インターネット、Google、Facebook、iPhone、プリウス、新幹線なども大きな目で見ると価値創造になっているとの指摘にはなるほどと思いました。

 石川研究室は、高速画像処理と新しいアクティブ光学デバイス・システムを用いて高速撮像制御を実現してきました。ダイナミック イメージ コントロール に関する研究であり、高速画像処理システムの開発で人間の眼を遥かに凌ぐ高速性を利用した新しい価値を創造する応用システムの実現です。

  他の大学の研究室の成果も含めた画像を見せてくれました。たとえば、バッティングマシンでの投球とバッティングの正確性は、見ていても驚くような画像でした。空中キャッチや高速ドリブルなども、見るものを感動させる神業をロボットがやってのけます。

 その成果は次のサイトから見ることができます。

  https://youtu.be/cVoilPhQiqY?t=70

 https://www.youtube.com/ishikawaLab

  こうした基本的な研究成果を実際に産業現場で応用する事例として高速道路の壁面を高速で検査するシステムを紹介しました。時速100キロで走る巡回車両から、トンネルの壁面にある0.2ミリの異変を識別するということです。

 また1分間に250ページの印刷物をスキャンするシステムも開発しています。これはすでに大日本印刷が実用化サービスを開始しており、東大図書館でも試運転中ということです。

  日本が長年、もの作りで蓄積してきた世界に誇る技術・ノウハウを応用したすぐれたAI研究成果は、実際に世の中に役立つシステム開発に非常に期待できることを知って嬉しく思いました。

文責・馬場錬成