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第150回21世紀構想研究会の報告

2019/10/19

「どうなる米中覇権戦争の行方 ~世界の産業現場を揺るがす両大国の後に引けない事情~」

   講師  杉田定大 (一社)日中経済協会専務理事

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 記念すべき第150回の研究会は、中国問題についての第一人者である一般財団法人日中経済協会の杉田定大専務理事に、中国の現状の解説と今後の予想について講演いただきました。

パックスシニカ(PAX SINICA):中国の夢

 サムエル・ハンチントンは著書『文明の衝突』(1998年)の中で、「2,000年以上にわたった西欧と日本に対する屈辱的な従属の時代に終止符を打ちたいと思っているのだ」と言っています。また、マーチン・ジェイクスの著書『中国が世界を支配するとき—-西洋世界の終焉とグローバル新秩序の誕生』(2010年)は、中国が世界を支配したときにどうなるのかという前提で書かれています。

それから、ハドソン研究所のマイケル・ヒルズベリーは著書『CHINA 2049』では、「中華人民共和国建国100年に当たる2049年には世界の覇権を米国から奪う。その覇権国家は、中国の伝統的な理想像に基づいて世界を再構築した、世界最大の経済、最強の軍隊による中国文明帝国だ」と言っています。去年の10月、アメリカのペンス副大統領が2049を言いはじめ、それを契機に、中国に対するアメリカの姿勢が大きく変わったといわれています。

 配布した資料の表紙にThe Economistの表紙を2つ載せていますが、12月が「Chip wars」だったのが、5月には「A new kind of cold war」と、半年の間に5Gのチップ戦争から冷戦にガラッと変わってきているというのがアメリカの見方です。

 ちなみに、米中の仲が悪くなると日中の仲は良くなるというのが、定説だそうです。

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 一帯一路構想

 アメリカと中国の仲が悪くなってきたときに、この一帯一路という言葉が出てきました。一帯一路とは、アメリカ第一主義から、ユーラシア第一主義、ヨーロッパにすり寄っていこうという考え方です。それから日本と仲良くやろうということでありました。

 一帯というのはシルクロード経済のベルト地域。中央アジアを経て、東のヨーロッパ、西のヨーロッパにつながるもの。

 一路というのは21世紀の海上シルクロード、ということです。東南アジアからインド、あるいは中近東アフリカにつながっていく海路です。

 基本的なスタンスは、東アジアの経済圏と欧州の経済圏をつないで、その中間の国家を発展させるというのが基本的な考え方で、ユーラシア第一主義だということです。

 中国製造2025

 もうひとつの背景となるものが中国製造2025という計画です。

 この計画は、2025年までに製造強国(先進トップ)の何カ国かの中にまず入るんだという計画です。さらに2035年までに製造強国陣の真ん中くらい、そして2045年にはトップになる。2049年に中国は建国100年。そこを目指して製造大国になるというロードマップ。

中国製造2025は具体的に何かというと、日本も昔、戦後の経済復興のためにやった施策で、10の重点分野を決めて傾斜生産方式を取るもので、国の資本をここへ集中的に投下していくものです。

 これをアメリカが懸念をしたのは、この中核となるものが国営企業という点。国営企業は当然軍事もやっていますので、国のお金が集中投下されることで軍事力も非常についていく。あるいは経済力もついていくということに非常に懸念をしたということです。

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中国の政治・経済社会の最近の動き

 2017年の党大会から、習近平一極体制、党の革新という形で、着々と自分の影響力を伸ばしてきました。

 以下の人民日報をご覧ください。

 胡錦濤が最初に出てきたときの2007年の人民日報。胡錦濤とチャイナナインが写っています。その後、胡錦濤から習近平に譲り渡す2012年はチャイナセブンの写真。しかし、習近平一極体制になった2017年は、習近平だけの写真となり、他の6人は集合写真という扱いに。これは非常に象徴的な写真だと思います。

 実は今、党の中でもけっこうざわついているのです。党の長老もブツブツ言ってるし、米中関係の問題では「やっぱり習近平じゃ駄目なんじゃないの」という声が聞こえてくるのです。

 2020年に向けた中国経済の三大課題と重点

 現在の問題は金融リスクや貧困対策、そして香港・台湾問題。特に香港問題はホットです。これをどうしのぐのかによって中国は崩れていくこともある。他にも退役軍人による抗議運動が起こっています。少しトーンダウンしてきましたが汚染対策です。

三大課題としては、

課題1:重大リスクの回避で「金融リスク」

 貿易黒字はまだ増えている状態だが、地方の債務はかなり増えている。ノンバンクの地方債務の比率がかなり上がっており危険な状態に近づいている。地方の銀行も債務超過になり、地方政府が支援に入ることも多い。

課題2:貧困撲滅(2020年小康社会の全面的実現)

 特に奥地は厳しいと言われているが、現地に行ってみると立派な車に乗っていたり、いいところを見せようとし、本当の貧しいところは見せないようにするため、判断が難しいが、深刻な問題であろう。

課題3:環境汚染防止

 かなり改善されつつあるものの、まだまだ問題を抱えている。大気汚染だけでなく、公害問題も出ているが、あまり表に出さないようにしている。ただ、国有企業を優先しているため、民営企業は非常に不満をもっており、今後、どうバランスをとっていくのか問題になるだろう。

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 日中関係の最近の動き

 現在、日中関係は非常に良いです。特に去年の5月に、李克強総理が来られてから非常に良くなった。北海道のトヨタのトランスミッションの工場も訪問し、水素のエンジンの未来とプラグインハイブリッド、イーパレットの電気自動車のシステムを見学された。それを発端に、超急速充電プラグインハイブリッドでは、日中がタッグを組んで標準化しようと話が進んでいますし、トヨタの燃料電池車 FCVのミライにも大変興味をもち、2022年北京冬季五輪では、イーパレット(トヨタの電気自動車の自動走行のシステム)やミライを2000台出すという話になっています。

この後、米中経済冷戦、ファーウェイ禁輸問題、等が怒涛の如く解説が進み、あっという間の1時間が過ぎました。情報の洪水で消化不良を起こしている方も多かったかもしれませんが、大変興味深く、中国についての理解が進みました。

 意見交換のコーナー

馬場理事長(司会):今、日韓が非常に緊迫した形で輸出規制になっていますが、これは中国も当然なんらかの形で影響があると思います。今回の韓国への輸出規制の背後には、アメリカの影がちらついているように見えるのですが、そのあたり杉田先生はどう見ていますか?

杉田先生:今回の輸出規制はおそらく官邸から、対韓国の対抗策を考えろと指示が出ています。第一段は6月の水産物の安全規制強化。しかし韓国はあまり反応しなかった。そこで第二弾が輸出規制です。以前から韓国の貿易管理が非常に緩く不満を持っていました。アメリカも懸念を示したし、日本も対話の場でそういう懸念を示したが、対話にすらも韓国は出てこなかった。このような経緯だったが、世耕大臣が徴用工の話をしたものだからややこしくなったわけです。第三弾、第四弾も考えており、官邸は継続していこうとしています。

 中国との関係で見ると、中韓ではサードミサイルの問題があったりして関係がよくないが、日中は仲良くすることで、韓国を孤立させようとしている。韓国はGSOMIAをはじめ、なんでも抜けていく方向にあり、非常に危険だとアメリカも思っているし、日本もそう思ってます。

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 発言:今、米中摩擦が起きていますが、中国側は比較的ファイト満々で、自分たちで開発するという方向になっており、2008年に研究振興法という法律ができました。この法律は、科学技術と教育振興で、一般会計の伸びよりもこの予算を増やさなくてはいけないという内容なのです。そのため、急速にこの予算が増え、中国の技術開発力がものすごく強化されている。この傾向が続く限り、中国はすでに日本を抜いており、間もなくアメリカに追いつく技術力がもう慣用されてきていると感じている。

 ファーウェイは、今世界で一番技術力のある通信会社であり、中国研究の矢吹晋先生は、5Gの世界では完璧に世界を押さえているとおっしゃっている。また、中国は墨子という量子通信の衛星を一昨年上げているが、アメリカはその分野で衛星を上げきれていない。今後、量子通信が5Gの先、6Gとすると、その6Gの分野にまで中国は進んでしまっている。

 中国の国家の体制、国家の意思、そして中国の研究体制。膨大な研究所や大学がものすごくあり、国が一致団結して、細かい計画を立てながら、組織的にやっているので、このスピードで突き進む。ほんの十数年の間にここまできているので、これに対応できなければ、西側社会は負けてしまうと私は思っています。

 杉田先生:今日話せなかったものに、イノベーション教育という話がありますが、日本は中国とアメリカの両方にうまく折り合いをつけながら渡り歩くようにしないといけないと強く思っています。量子技術などのようなポジショニングみたいな技術はちょっと除いておいても、そうならないような自動走行などは、積極的に日中で組んでやったほうがいい。最近は官邸もそう言いはじめている。アメリカをちょっと念頭を置きながら、やれるものはどんどんやっていったほうがいい。せっかく今、日中が組むことで大きなマーケットがあるのに、それを逃す手はないし、クローズにすればするほど中国は力をつけていく。

 天安門事件の後、日本が一番最初に中国の留学生に門戸を開いたのですが、そのときに来られた中国人留学生が、日本でも活躍されて、新華僑として活躍されている方が多い。同じような現象で、アメリカに行けなかった人がぜひ日本に来たいと希望する人が増えている。また、我々は毎年北京の大学生を日本に呼び、1週間ほどの研修旅行や企業研修を進めている。彼ら清華大学、北京大学の学生が、ぜひ日本に来たい、とはっきり言う人が増えてきている。これは我々のチャンスである。アメリカに怒られない程度に、組めるところはどんどん組んでいく。

 しかし、そんなことできるのか?とよく言われるのですが、やれなかったことを今やっていくというのが、今の日本に求められているもの。日本と中国が組めるところはまだまだあるのではないか。中国14億人のマーケットはおいしいはずだし、トヨタは垂涎のはずでフォルクスワーゲンもGMもへこんでいる今がチャンスと捉え、ガンガン攻めている。

 アメリカは、日本がジャパン・アズ・ナンバーワンでガンガンいったときと同じように、今、中国を叩いておかないと自分たちの地位が揺るがされると考えている。過去の日本と同様に、技術を盗みニセモノ大量生産し、ズルばかりしていると、アメリカは本当に思っている。

 中国は中国で、ズルせずに自分たちで技術を身につけていくということも大事なんだということを意識し、知的財産権をしっかりと守るということが必要。それらについては日本はアドバイスできる立場にある。お互いの国で、問題があるところは問題があると指摘するということが、日中の大事な関係じゃないかなと思います。

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 司会:中国があっという間に日本に並びかけて、あっという間に追い抜いた科学技術、技術開発。その研究開発の成果は当然知的財産権として囲い込むわけですが、日中の知的財産制度の現状は一体どうなっているでしょうか?

 発言:中国では研究開発の成果をしっかり特許にしようという施策で、特許をものすごく増やした。日本が年間30万件くらいのところ中国は150万件くらい出願している。この差は国の施策も関係している。日本は特許を取ると金を取られるが、中国では特許を取ると政府が金をくれる。補助金まで出して、こういうものは大事だということを国中に広めた。だから、中小企業や個人でもどんどん特許をだす。そういった背景があり、ファーウェイも世界でも一番いい特許を取るようになった。それが第1段階。

 第2段階は、偽物ばかり、パクリばかりからの脱却。自分の権利を主張しようと、中国の人たちはやたら裁判所へ行くようになった。今やアメリカよりも裁判所に行くことが多い。例えば日本では、特許侵害で裁判所に行く件数が年間200件。アメリカは4,000件。でも中国は1万件。さらに、権利は主張するものだという意識から、こんな特許じゃ駄目だと特許の中身も良くなってくるという好循環。中国は今や人をパクる段階は終わり、自分の権利を主張する。世界中で一番いい特許を取ろうとファーウェイのように、世界中で一番いい特許を取るようになった。今でも中国はニセモノをたくさん作っているし、世界のニセモノの95パーセントは中国製だといわれるくらいだが、一方では、本物もものすごく力をつけてきている。しかも、国がそれをサポートしている。とにかく今までは偽物でやってきたが、これからは本物でいくんだと。そのためには裁判所をしっかりやる。アメリカで学んだ裁判制度を採り入れ、ほとんどアメリカと同じような裁判制度にした。そんな中、いまだに日本は、争いごとは良くない、裁判所に行くのは良くないと思っているが、米中は争うこと・戦いによって初めて強くなっている。日本も少し根性を入れて、日本の裁判の仕組みを変えていかないといけない。

 あんなに法律を守らない変な国だと思っていたが、知財だけ見ると法律を守っているという、不思議な組み合わせ。我々も中国はこういう国だと思って見ていく必要がある、あの国は法治国家なんだと思ったほうがいいというのが今の印象です。

 司会:ありがとうございました。知財の司法制度も、中国のほうが日本よりもはるかに進んでいる状況ですね。

 発言:今年、材料系をやっている研究室の准教授が中国の大学に数億円でスカウトされた。アリババが負担したらしい。他にも中国には驚かされている。例えば、M5StickというAIを搭載した掌に乗るサイズのIoTコンピュータが4000円で売られており、深センで作られている。マイクや液晶ディスプレイもついており画像処理や音声処理が簡単にでき、ソフトもタダ。すでにアメリカでも多く輸入されて使われている。

 中国のあの開発費などのお金は、いつまでつづくのだろうか?いっぱい儲けたと言っていた外貨もどこかに消えてるんじゃないか?こんなにいろんなことにお金を使って平気なのかと国民も思っているのでは?日本のバブルみたいに北京オリンピックが終わったら中国は崩壊すると言われていたが、まったくその気配がない。

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 杉田先生:今厳しい状況にあるが、なんやかんやでしのいでいる。イノベーションで富を生み出そうとしているからだ。テンセントやアリババが海外から稼いできて、技術を持ち帰ったりしている。今後、中国が民営起業家をどううまく育てながら、構造改革をしていくかというのが大きなポイントだと思います。

 残念ながら、国営企業はかなり無駄遣いをする人たちが多い。そして、国営企業は従業員も含めて全部丸抱えで、職場を提供し、生計を立てられるように背負っていくという姿があまり変わっておらず、民営化はそんなに進んでいない。今後の中国経済を支えていくのは、民営起業家。特にニューエコノミーと言われる人たちがどう中国でも頑張り、海外でも稼いでいくか、という世界になるだろう。

 もう一つ、一帯一路はかなり無駄遣いをするだけで、インフラを作りにいっても、そんなに大きな効果は出ていない。中国が戦略的な場所を押さえるという点では効果があるが、経済的に中国の富を増すということにはあまりならないとみている。

 面白いなと思った例をあげると、日立が毎年国家発展改革委員会というものを早いうちから中国と何か組めないかということを努力されている。例えばテンセントと組んでエレベーターのAI化を進めた。自分たちはものづくりで優れたエレベーターを作り、AI化によって効率的に動かす。他にもみずほ銀行はフィンテックでアリババと組んだり、パナソニックは中国の新しい起業家と組んで新しいビジネスモデルに取り組んでいます。ある程度中国の実力に気付かれた方はそういう取組みを始めており、それが日本と中国のウィンウィンで、一つの成功モデルを作られていると感じています。

 今、私はスタートアップベンチャー企業を日本から連れて行って、中国とビジネスマッチングをしているのですが、何社かはすでに工場をつくったり、事業を開始したりしています。この人たちが日本の新しいジャパニーズと、新しいチャイニーズで、新しいビジネスモデルを作っていけるんじゃないかなと思います。

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 発言:アカデミアという観点で見ると、中国はものすごい金を大学に投資しています。しかも、自由勝手に何をやってもいいからねというタイプの投資をしていますが、日本の大学は運営費交付金をどんどん絞られて、自分がアイディアドリブンで何かやろうというときになかなかできない。それを中国は20年くらい前から何に使ってもいいよ、交際費に使ってもいいんだからという形で、大学の研究者にすごい金を渡して自由にさせている。本来自由な国じゃないところに、アカデミックフリーダムを持ち込んで、投資をしてきたと思います。ただ、誰にでもいいわけではなく、かなりのエリートにそういう投資をしてきたというのをうまく回してきたのが中国じゃないかと思います。

 AIにしても、いろいろな現場データをどうやって回すかというところでAIの性能が決まってくるわけだし、顔認証にしても、中国ではもうそんなの当たり前で、人のデータを集めるのも当たり前で、個人情報がどうのこうのと言っている日本よりも進んでいる。そういういろいろな規制を全部外して自由闊達に動けているのが中国。

 ただ、中国の今の状況がずっと回っていくんだろうか。やはり中国の人民もずっとある意味で搾取されながら、黙っているはずはないと思う。香港みたいな状況にならないか、今の状況で押さえきれるのかどうか。学者としてはすごくうらやましいなと思いながら、そのあたりはどうなんでしょう?

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 杉田先生:なかなか難しいご質問です。いろいろと中国の人に聞くと、香港問題、それに台湾問題、これらのハンドリングを間違うと、少数民族であるウイグルとか、他にも退役軍人問題でもらえる年金がもらえなくなってデモを起こしたりしていることに影響する。それで中国内では香港のニュースを全部非公開にしていました。こういうものにどう対応をするのか。この対応ぶりを間違うと、おそらくグズグズと崩れていくんだと思います。アメリカはある程度崩れるだろうと待っていたのですが、案外崩れない。逆にますます強くなっている。トランプは4年か8年で退任するが習近平はずっと主席をやっている。これは金正恩がずっとやるのと似たようなもので、ものすごく危ないとアメリカは思っている。アメリカは中国製造2025についても非常に危機感を持った。

 どこでどう崩れていくのかわからないが、香港問題でハンドリングを間違うと、中国全体に及んでくる。しかし、中国人は待つのは非常にうまいですから、待って待って待ちながら、向こうが根気負けしてくるのを、中国の若い人たちが根気負けをしてくるのを待つのかもしれません。だから、なるたけ対症療法をしておいて、全体の流れは大きく変えない。今の習近平の人気は絶大だし、国として一体となって取り組む姿勢ができてきた。

 今後、経済がどんどん悪くなってきたとき、国内の不満がいろいろな層ででてきたときに、どうするのか。しかし、中国の役人は賢いので一生懸命いろいろな国の、日本やアメリカの成功例、失敗例等をいろいろ勉強しているので、乗り切るのではと思う。しかし、2049年とか2045年くらいまで本当にもつかどうか、と言われると、ずっと現状維持できないのではないかという気がします。

 発言:私は日本がちょっと神経質すぎというか、知財に関してとか、清廉潔白を求めすぎているのではないかと思います。例えば、日本にはニコニコ動画がありましたが、中国にはこれをパクったビリビリ動画というのがある。日本のニコニコ動画は今はカドカワのお荷物になったが、中国のビリビリ動画はナスダックに上場した。何が違ったかというと、ニコニコ動画は著作権に厳しく二次創作も排除していったが、ビリビリ動画は二次創作だけでなく、著作権を無視して日本のアニメを流がすほど緩い。さきほどの投資の話でも出た「金は好きに使っていい」というおおらかさが日本で消えてしまったのは残念だと思っています。

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 杉田先生:中国の起業家と議論をしているときに知財の話がよく出ますが、中国はわりと自己規制でやってます。まずはやってみなさいってことです。例えばフィンテックも、ブロックチェーンやビットコインなんかも、わりと野放しでした。野放しにした中で、ブロックチェーンの技術などが進化しています。ビリビリ動画も、著作権であまり厳しくしないでまずはやってみて、問題が出てきたときにどうするかを考えるという、アメリカに似たようなところです。日本は法律制度が出来上がっているものですから、そこに縛られると規制を緩和していくほうが難しく、なかなか新しいビジネスが出てきにくい状態になってしまってます。そういう意味では、もうちょっと寛容に、少し自由にやる国家戦略特区などは、非常に面白い取組みだと思います。

 司会:中国の現状や戦略について非常に多くの情報が詰め込まれた今日の講演でしたが、日本の将来についても考えさせられました。杉田先生、ありがとうございました。

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(報告:21世紀構想研究会事務局 渡辺康洋)

(写真:21世紀構想研究会事務局 福沢史可)