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第202回研究会 橋本五郎氏が語る「高市政権と日本の行方」

2025/11/14

高市政権と日本の行方
――山積する政策課題をどう乗り切るのか――

馬場錬成(21世紀構想研究会理事長) 参院選での自民・公明与党の大敗北、石破総理の退陣、自公与党の破綻と自民・維新連立政権発足など、目まぐるしく転変する政治の混迷が続いてきました。こうしたなか、日本の憲政史上初めての女性内閣総理大臣が誕生しましたが、依然として不透明な状況にかわりはない。ここはひとつ、橋本五郎さん(本会会員、政治評論家、テレビキャスター)に登場願って、長年の政治評論の実績と独特のセンスで、われわれ素人にもわかりやすく高市政権の行方など状況を解説していただきます。

  第1部 橋本五郎さんの政治論評

  順調な高市政権のスタート
橋本五郎 高市政権は非常に高い支持率で始まりましたね。 小泉政権、鳩山政権に次ぐ高い支持率でスタートできた。 予想よりも高いという気はしますが、状況にも恵まれた。「外交ウィーク」と呼ばれるように、まず首脳外交が相次いだ。これがプラスになっていますね。
首脳外交は、それぞれの首脳が本国に戻って、「このようにうまくやってきた」と言わなければならない。それが、外交というもの。 そうすると、まず会ったトランプ米大統領は予想通りの対応だった。 日本に来て、相手のことをあえてこき下ろすようなことはしませんよ。
中国については、習近平主席の権力が完全に確立しているという状況が大きい。 最初に、当時の安倍総理と習近平が首脳会談した時は、習主席はそっぽを向いています。会談を重ねるごとに、あのにこやかな顔になるんですよ。権力を掌握しきっていないうちに日本に、にこやかに接すると、自分の権力基盤を危うくすることになるからです。
やがて、「私がもしアメリカで生まれていたら、共産党には入りません。 民主党か共和党に入りますよ」と安倍にもらすまでになる。安倍さんが回顧録の中で、習氏の強烈なリアリストぶりの例として語っています。さらに、米中が激しく対峙している時期であり、日本を自国側に巻き込みたいという中国側の事情も高市外交にプラスになりました。

 高市政権へ至る背景に「不安」の作用が
 高市さんは昨年の総裁選にも出馬し、予備選で1位になりながら最後は石破さんに敗れている。その背景を私なりに解釈すると、予備選で高市が勝ったのは、石破、小泉進次郎両人に対する不安が自民党内、特に党員の間に強かった。 「この人たちで、きちんと総理ができるのだろうか」という不安が。 ところが、石破と高市が争った決選投票では、今度は高市に対する不安が作用した。「絶対に靖国参拝をする」と主張している総裁を選べば、一体どうなるんだろうと。中国、韓国との関係だけではなく、日米関係もおかしくなるのではないかという不安ですね。
 では、高市、小泉両氏が争った今回の総裁選ではどうだったのか。 ここでは、小泉に対する不安が表面化したのではないか。 日本記者クラブでの候補者討論の時に、紙ばかり見て話す。言質をとられないよう安全運転に徹する姿が、不安を感じさせてしまいます。支持する人たちに右派が多い高市に対する不安がないわけではないが、結果は高市が選ばれました。 岸田総理から一挙に高市総理という流れでなく、その間に石破政権を経たことで、右派色の強い政権もスムーズに登場できたのではないでしょうか。旧来の自民右派支持者の票が、保守党、参政党などに流れるという時代の変化もありました。

 自民党の「振り子の原理」
さかのぼると1955年の結党以来、自民党には「振り子の原理」といえる力が働いてきました。総理大臣のタイプを変えることによって、あたかも本格的な政権交代が行われたような印象を国民に与えられる。疑似政権交代ですね。金権で田中角栄が倒れればクリーンの三木総理、大統領型の中曽根の後には調整型の竹下総理という具合に。 今回の総裁選でも、反安倍の意識は強いものの何かを強力におし進めるタイプではない石破政権から、「自分はこうやりたい」と明確に主張する〝革新型〟の高市政権にタイプを替えました。
自民が長期にわたり政権党であり続けた理由のひとつに、中選挙区制があります。多くの候補者を出さないと政権が取れないので、候補者を選りすぐって派閥が育て、各候補者らが競って支持者を掘り起こします。多数の候補者を擁立できる党は自民党しかなかったので、長期政権を維持できたというわけです。

 進む野党の分断化
総裁選、首班指名を通して感じたのは、野党がある意味では分断化されているということです。政権に対して野党がすごく防御的になっている。衆院148議席と、与党にそこそこ迫る野党第一党の立憲民主が、政権を取りにいかなくてどうするんでしょうか。野党第一党の党首が、わずか28議席の国民民主党の党首に「あなたを総理大臣にしますから」などとて言っているありさまです。
 維新は、さいわい公明が連立を離脱してくれたということで「12項目の連立合意」を結んで、自民との連立に加わった。しかし、「いつでも出るぞ」 という脅しの道を残しており、完全には中に入らない半身の構えです。
公明党については、私は「一瞬すっきり 後で後悔」という具合に表現しています。自民党と一緒にいることは精神衛生上も良くないし、政策もやはりちょっと違う。26年もやっていると、倦怠期というのでしょうか。ただ、自民との連立時代には、選挙協力や閣僚ポスト(国交相)など、公明側にとってのメリットも大きかった。そうしたメリットがなくなるだけでなく、与党から急に野党になって、他の野党とどのように付き合っていくのかという問題もある。他の野党が仲良く仲間に入れてくれるのか、またいつか与党に戻ると思われないかといった懸念もないわけではない。

「チーム高市」の構築が急務
こうした野党の状況に対して、高市政権はどのように対していくのか。しばらくは、各野党に声をかけてその意向を聞きながら、それぞれと交渉するやり方をとっていくでしょう。その手法は、野党を一つにさせないというブレーキにもなる。
全体に目配りしながら、政局に関わるようなそうしたことをやってきたのは、石破政権では森山幹事長だったが、高市政権で誰がやるのか見えてこない。なにもかも一人でやれるわけではないので、チームとして取り組む「チーム高市」を整備しなければならない。自分を支持してくれた、くれなかったというレベルを超えて、いろいろな野党とパイプのある党内の人物の協力を得ることも欠かせません。
さらに望むなら――これは前政権時代から私が強く主張してきたことですが、政治の個別問題を超えて国の行方にかかわるような大きな課題について、有識者らに広く声をかけ、オールジャパンで考えるような場を設けてもらいたいと思っています。

 戦略的リアリストたれ
 高市政権に関していろいろな不安も指摘されていますが、私は先週、高市さんに宛てたコラムを新聞に掲載しました。タイトルは「戦略的リアリストたれ」です。その冒頭に、幕末の儒学者・佐藤一斎の次のような箴言を記しました。
 一燈を提げて暗夜を行くに 暗夜を憂ふるなかれ 只(ただ)一燈を頼め
 高市政権は厳しい状況のなか歩み始めましたが、何を「一燈」にして進めばよいのか。私は「安倍政治」だと思っています。その内容を凝縮したのが、『安倍晋三回顧録』です。聞き手が私だったので、手前みそと思われかねませんが・・・。
 強調したいのは、寝食を忘れ、家族を犠牲にし、さらに自分の出世までを犠牲にして「安倍政治」を支えた秘書官、補佐官らの献身です。例を挙げると、今井という経産省出身の秘書官。第2次安倍政権発足後の8月15日に靖国に参拝しようとした安倍を、「本当に行くなら私は辞めさせてもらいます」と身をもって諫めた。日米関係が完全に壊れかねないことを懸念した無私の行動でした。これは一例で、他にも様々な事例が「回顧録」には書かれています。

 左右にウィングを広げ 「ふくよか」に
 戦略的な安倍政治の事例として「戦後70年談話」、「韓国との間の慰安婦問題」などいろいろありますが、いずれも保守派からの厳しい
批判にさらされました。安倍さんには、「保守派の人たちは常に100点満点を求めるが、政治の現場でそんなことは無理」という考えが
あり、保守派をしたたかに抑えこみました。自らが保守派であったかこそ、できたことでもあります。
また、日米関係一辺倒ではなく、日中、日露、日印など多角的な連立方程式を解くことを目指した。まさに、「戦略的リアリスト」です。
最近の高市さんの国会論戦などを見ていると、様々な分野でよく勉強されていることがわかります。そのうえで、安倍さんのように、左右
さまざまな意見を包み込む包容力をもって臨み、必要な時には断固として決断する。高市さんには、そんな「ふくよかさ」もあわせ
もった政治を行うことを期待しています。
 第2部は、質疑・討論です。
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