お知らせ

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第4回生命科学委員会「幹細胞研究の光と影 Hop STAP Drop」開催報告

2014/05/20

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  21世紀構想研究会・生命科学委員会(東中川徹委員長)が、5月19日、プレスセンタービル9階の宴会場で開かれ、黒木登志夫先生(日本学術振興会・学術 システム研究センター・相談役、東大名誉教授、元岐阜大学学長)が、STAP細胞論文は捏造にあたるとする厳しい見解を示した。

  黒木先生のレクチャータイトルは「幹細胞研究の光と影 Hop STAP Drop」。受精卵というたった1個の細胞から、人間一人分=60兆個で出来上がっている生物個体を形成する元になっている幹細胞について学術的に分かり易く解説した。

 幹細胞の研究の歴史を紹介

  これまでの幹細胞の研究の歴史とその業績、臨床研究への応用への挑戦まで多くの歴史的事実を駆使して解説した。またノーベル賞受賞者の山中伸弥博士が開発したiPS細胞の作成までの歴史も紹介した。

  そして幹細胞であることの証明は、その細胞が多分化能であることを証明しなければならないと解説。それには①培養細胞の分化、②奇形腫の形成、③キメラマウスの作成、④丸ごとES細胞マウスの作成の4つの証明が必要であることを示した。

  黒木先生が論文を精査したところ、小保方晴子さんのSTAP細胞論文は、この4つの証明をきれいに書いており、論文としてはきわめて完成度の高い内容になっていた。しかしこの論文の信じられなかった理由と信じた理由を書き分けてみたという。

  信じられなかったのは、いとも簡単に幹細胞を証明しており、信じたのはこの分野のトップクラスの研究者が共同研究者として名前が記載されていたことだった。

 STAP細胞をめぐる疑惑を解説 

 STAP細胞論文の発表直後から、「11jigen」などのネット上に論文を疑問視する指摘が相次ぎ多分化能を証明する画像の捏造を指摘されるようになる。改ざん、不審、疑問点を整理したうえで黒木先生は、小保方さんは研究者失格であるとして4つの点をあげた。

   それは①他の論文からのコピペ、②データ画像のコピペ、③スキームのコピペ、④お粗末な実験ノートである。そして「論文は自己完結でなければならないが、 STAP細胞論文はこれを著しく逸脱しており、STAP細胞存在の証明はされていない。論文は撤回するよりない」との結論を表明した。

  さらにSTAP細胞問題が日本の科学界へ波及していく懸念があることを指摘し、「日本の科学研究が生き延びるためには、むしろ小保方さんと共同研究者らのしっぽ切りが必要である」とする独自の見解を示した。

   講演は黒木先生のいつものように、ユーモアやときに皮肉を織り込んだ分かりやすい興味あふれる内容であり、聴衆が理解できるように組み立てたものであり、 このテーマの学術研究を歴史的に解説した点でも優れた内容だった。聴きに来ていた高校生も非常に感銘を受けた様子だった。