お知らせ

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第114回21世紀構想研究会の報告

2014/10/11

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「どうする日本の地方再生と企業経営」

日本の価値最大化に求められる重要課題

いまそしてこれまでの延長線上に日本の未来はない

株式会社・Aurea Lotus CEO 柳下裕紀   

 学生時代、女性を輝かせてくれる社会でないように感じていたので、男女区別なくフェアな扱いをする外資系企業に入った。それから30年経ったが、日本社会はまだ女性を輝かせていないように感じる。 

 日本はなかなか変わろうとしない。息苦しさがある。アベノミクスが2012年末からスタートして13年4月に第1弾そして最近、第2弾を施策しているが、実態経済がおかしいと感じている。

 消費税の増税でインフレを実現するという。アメリカの金融緩和は日本と違う。リーマン ショックのときは、アメリカの金融機関は非常に深刻だった。モラルハザードを度外視せねばならないほど緊急だった。日本は、リーマンショックのときは金融 が重症でなかったが金融緩和してきた。

 白川前日銀副総裁のとった金融政策は教科書的にも正しい。効果がまったくなかったわけではない。 いま、企業は簡単に設備投資できない。将来的にも、設備投資は回らないと白川さんは強調していた。

 いまアメリカのFRBは金融緩和が直接経済を回復させるとは言っていない。日本は社会保障費をどうするか大きな問題だが、公共投資をしている。民間に出すべき金が、利益を出さないものに投資している。 

 株高を演出し、下品な表現になるが「シャブづけ」にしているように感じる。白川前日銀総裁 は、ちゃんと仕事をしていた。黒田総裁になってマネタリーベースを増やしても、銀行が世の中に放出するストックベースが全く増えない。日銀当座預金が増え ても貸出残高は増えていない。銀行が放出しないのでデフレを解消していない。 

 フィッシャーの貨幣数量方程式に当てはめても、日銀方針がおかしいことがわかる。(通貨の 総量)×(貨幣の流通速度)=(物価水準)×(財・サービスの取引量)=GDP この方程式の中で日銀がいくらお金を供給しても銀行にお金がたまっていれ ば、貨幣の流通速度はゼロになる。

 貨幣の流通速度や財・サービスの取引量を決めるのは国民だが、雇用に不安があり生活防衛で買い物をしなければ、この方程式はうまくいかない。  銀行がお金を出す、国民がお金を使う、そしてGDPを決めるのは国民だが生活防衛でお金を使わないのでは成り立たない。

  日銀は、短期国債を償却額の上回る金額で市場から買い入れている。マネタリーベースの増 加が政策目標なので国債買い入れが目的化している。損失覚悟で額面を上回る高い価格で落札し金融機関にプレミアムを付けている。 コストはすべて国庫納付 金から出るのでつけは国民にくる。

 日本は総事業所数の91パーセント、雇用者の84パーセントが非製造業である。輸出依存も15パーセント以下の内需大国である。この60年間、日本の輸出依存度は10-15パーセントである。円安になっても一部の輸出企業が潤うだけである。

 消費税のアップは、経営に対する中立性が欠如した弱いものいじめである。人口減少が進めばお金を使う人数が減るのだから一人当たりの使う金額を増やすために減税しなければならないのに増税している。内需の減少は、所得税、法人税など他の税収も落ち込むことになる。

 これこそ天下の愚策だ。

  かつて超円高水準の中で輸出を倍増させていた。バブルのころ42兆円でありリーマン ショックの前には80兆円台になっていた。日本の企業の競争力はものすごく強いからもっていた。 円安になったらその特質を生かす政策をしなければならな い。観光業の伸びしろはまだ大きく、外国から呼び込む観光客の総数はモロッコと同じ程度の観光産業である。これを活性化しなければならない。

  国内の旅行効果だけでも30兆円ほどあり、雇用者も460万人を生む。海外から旅行者を呼び込めば、高齢者の活用の広がりも出るし外国人の消費は国内減退の補完になる。必要な施策は規制緩和、許認可制度の改善、新規ビジネスのアイデアを積極的に採用するなどがある。

  カジノで国を救うなんて懐疑的だ。経済効果に疑問符をつけたい。日本はギャンブル大国であり24兆円の市場規模がある。カジノで4000億円の収入があっても小さい。

  世界は今カジノ離れでありマカオも不況だし斜陽産業だ。ラスベガスはカジノだけではな い。子供、家族も楽しませるデザインと洗練されたビジネスメソッドになっている。政府は経営しないでテナント料を取るだけだ。債権管理能力をどこに任せる のか。地方振興になるわけがない。

  地方再生の要諦は、外部の力や財源に頼らず、地元の人、モノ、金、文化を最大限活用する ことだ。地元を最大限活用して地域住民を巻き込むことだ。自立して稼ぐことしかない。 たとえば清酒造りは日本の風土そのものだ。日本酒造りは独自に磨き 上げられたワザである。並行複発酵は日本独特のものだ。日本人だけが麹菌を発見した唯一の民族だ。

  発酵が進むとアルコール度が高くなる。水がおいしい場所でないと酒が造れないし日本の風土とあっている。日本酒を水で薄めたりシャンパンにしたり自由度の高いお酒である。日本が伝統として持っている酒の資源を大事にすることだ。

  海外20か国に日本酒を出している桜井博志さんは、巧みなブランド戦略と明確なコンセプトで成功している。「日本酒の伝道師」である長谷川酒店の長谷川浩一社長は、全国の酒蔵200以上をめぐり、知られていない地酒を発掘し、常時800種の銘柄を取り揃えている。

  いま進行中のTPPを恐れず、外へ攻めて出ることを考えよう。円安の弊害を緩和して外へ攻めることを考えよう。良質なコメをアメリカに売り込むチャンスだ。将来の人口年齢層別分布の推移を見てもアメリカが成長することは間違いない。 

 四国には徳島県上勝町の過疎化・高齢化を強みに転換した株式会社いろどり、伊予現代町家のコンセプトで施工まで請け負う建築事務所の株式会社コラボハウスなど、多くの成功事例がある。

  愛媛の今治造船も大手海運企業、造船所、荷主、保険会社、船舶部品メーカー、銀行などと連携した独自のビジネスを築いて成功している。このような成功例を見習い、日本の再生に取り組むことが重要だ。 

(文責・馬場錬成)