お知らせ

お知らせ

第118回21世紀構想研究会の報告

2015/05/28

第118回・21世紀構想研究会の報告

DSC_0514

  第118回・21世紀構想研究会は、現在のメディアのあり方に舌鋒鋭く迫るジャーナリストの前澤猛氏をお迎えして講演と討論を行いました。

  前澤氏はまず、瀬木比呂志氏が書いた「絶望の裁判所」「ニッポンの裁判」(いずれも講談社現代新書)を読んで衝撃を受けたことを語りました。司法記者を務めてきた体験からみると、「日本の司法は半世紀前と何も変わっていない」とコメントしました。

 新聞記者になった昭和31年当時のころを振り返り、「そのころ、読売新聞記者はヨタモノ、毎日新聞記者はマヤカシ、朝日新聞記者は、エセ紳士と揶揄された」とし、記者は会社の従属物であり、新聞記者と新聞社は様々な理不尽な特権を持っていたことを語りました。

  当時、国鉄パスの提供を利用して、記者は国鉄をただで利用でき、行政官庁の審議会の委員になることにも疑問を持っていなかった。こうした悪弊を最初に返上したのは朝日新聞だった。

 さらに、歴史に残る新聞の誤報事件を紹介し、新聞ジャーナリズムの暗部を語った。米国は表現の自由が確立されているが、日本のジャーナリズムでこれを厳格に守っているメディアは存在せず、大学の学部にも新聞学科があるのは上智大学だけであり、社会的にもまだジャーナリズムは未熟のままに放置されている現状を分析しました。

  また日本の新聞は、署名記事が少なく、情報の出所、情報源、談話の引用などにも曖昧な部分がまかり通っている。日本の新聞はまだまだ矜持に甘いとする見解を語りました。

  また報道機関としてのメディアに求められる最も大切な機能は「権力監視機能」です。公権力に癒着・追随したり、政府におもねったりしてはなりません。

「政府が右というものを左というわけにはいかない」と公言する人がNHK会長にいたり(籾井勝人氏)、特定秘密保護法に賛成し、自ら有識者会議「情報保全諮問会議」の座長に就任する人が新聞社のトップにいたり(渡邉恒雄氏)――そうした状況が続けば、メディアに対する読者・視聴者の信頼は失われてしまうでしょう。

  このような見解を明らかにし、日本のジャーナリズムのあり方に警鐘を鳴らしました。

(文責・馬場錬成)