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第121回・21世紀構想研究会の報告

2015/12/02

第121回・21世紀構想研究会の報告

  第121回・21世紀構想研究会は、10月21日、プレスセンタービル記者会見場で開催され、「TPPは千載一遇の日本のグローバル化加速剤だ」のタイトルで柳下裕紀先生・(株)Aura Lotus代表取締役社長が講演した。

 TPP交渉の大筋合意が伝えられた直後だけに関心が高く、会員以外の方々の参加もあって定員の60人を超える盛況だった。

 柳下先生は、まずTPPの基本について、交渉31分野に関する通商ルールの統一、共通のルール作りであり、合意内容の履行は参加12か国全てに義務化されるからこそ、熾烈な国益のぶつかり合いになったと解説した。

 得をする業界以上に損をする業界、特に変革を迫られる既得権益業界からの反発が強烈になると指摘。実際の主役は民間資本であり、このような状況を捉えて、日本をグローバル化に加速させる絶好のチャンスが来ていると考えるべきとの観点で話をすすめた。

 TPPによる改革で消費者が最大の恩恵が期待できるのは農産物であり、内外価格差が大きい5品目が自由化されていれば、国民にとっては大きなプラスになっていたはずとした。

講演でも関心の多くがこの分野に寄せられていたようだ。

 OECD調査によると、日本の農業保護・規制による内外価格差で消費者に負担させている金額は4兆円だという。これは消費税1.6%に相当するので、現行の8%にこの分を足すと、実質的に9.6%の消費税を負担していることと同じだと指摘。

 牛乳・乳製品や小麦など外国と国産とで大きな価格差がある食材は、様々なからくりと制度によって消費者に負担をかけていると具体的な仕組みをあげて指摘した。

独占的な市場支配で肥料、農薬、機械などの資材を高く売りつけ、農産物の高コスト体質を作り上げてきたのは農協であり、早急に抜本的な改革を進める必要があるという。

 コメの国際価格をみると、今ではアメリカのカリフォルニア米の方が、国内産米よりも高くなってきているという。カリフォルニア州の干ばつの影響もあるが、この逆価格差を利用しない手はないとも主張した。

 国内第2位のメガバンクとなったJA農協バンクは、「真剣に米作りを手がける主業農家に融資しているのはたったの1~2パーセント」という。あとは農家でもない一般利用者に住宅ローンの貸し出しをしたり国内外の金融市場で運用をしている。「農業を弱体化し、自ら脱農化することで発展してきたのが農協なのだ」と指摘する。

  国産比率8割以上という野菜農家は、「コメ農家の2割以下しかないが、コメ農家の6倍の売り上げをあげている」という指摘があった。コメ農家がいかに非効率な構図の中に放置され、国民の税金の補てんで生き延びてきているかを示したものである。

  日本のコメ消費量は、年間8万トン減少している。これは自由化しなくても生き残りは困難であることを示しているという。

 安楽死への道を進んでいる現状を、どのようにするべきか。

 柳下先生は、需要に合わせた新陳代謝をスムーズに進めれば、農家の戸数が減り、農地集約が進み、コストが下がると主張した。作りたいのに作らせない、頑張りたいのに頑張らせない、頑張ったら罰則が来る、という価格カルテルの減反政策に税金を投じるのではなく、競争力のある主業農家主体のコメ作り、生き延びる道はこれしか考えられないという。

  産業分野では、争点だった原産地規則、加盟国内で一定基準値以上の現地調達義務を設ける規則は、全加盟国の付加価値を合算する「累積」が採用されている為、多国間の枠組みが最も生かせ、無税対象の貿易拡大になると指摘。

 中国や韓国など、TPP未加盟国は競争条件が不利になり、部品・素材調達が減らざるを得ない可能性が高い、そうした域外国の不利益を最大化する構造と設計がTPP参加を望む国が増えるドミノ効果をもたらすという。日本の自動車メーカーや部品メーカーにとってもメリットが大きくなる。

  NAFTA加盟によってメキシコ経済は、農業の抜本的な改革を成功させ、貧困を削減し、世界7位の自動車生産大国にまで発展したが、反対派には誤解されている。

  同様に誤解が大きいのが、毒素条項などと騒がれるISDS条項で、これは外国企業が進出先国で、正当化されない外資規制など国内企業優遇によって不公正な扱いを受け、『具体的な損害』を被った場合のみ、仲裁判定が下される制度である。

 国家の裁量権に不当に踏み込む訳ではなく、基本的に政府の理不尽な協定違反から、外国投資家を保護する為にある。日本企業が他国に進出して損害を被った際にも、同制度に守られ、不利益な扱いを受けないようにする制度であり、投資・貿易協定に不可欠の制度であると主張した。

 古い体質、古い施策、後発国並みの保護政策を打ち破るのがTPPであるとする柳下先生のご講演は大変、ためになった。

文責・馬場錬成