お知らせ

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第108回21世紀構想研究会報告

2014/01/28

第108回21世紀構想研究会は、岡山県の有力な地元企業として活動していた優良企業の株式会社林原が、実質的に倒産に追いまれた顛末について講演 し、活発な質疑が展開された。倒産に追い込まれたのは、同属経営による放漫経営であり、長い間、粉飾決算をしていたと報道された。本体の株式会社林原は、 子会社の林原生物化学研究所で研究開発した多くの成果を特許出願しており、少なくとも数千件の特許があったはずだ。

この日の林原氏は、まず1886年の創業以来から破綻に至るまでの社歴と世界初として市場に出してきた製品の数々を紹介した。本体だけで年間350億円ほどの売上があり、年間キャッシュ獲得は100億円を超えていた。関連子会社を入れると650億円の売上だった。

 

しかも破綻とされたときに、弁済率が93パーセント以上であり、知的財産権や様々な文化的な資産を計上すれば、優に100パーセントを超えていたとも語った。そのような企業がなぜ、金融機関によって破綻させられたのか。

 

金融機関の事業価値の評価は、知的財産権のような無形資産は評価せず、社長の個人保証や生命保険を担保にするような非人間的な査定だったことを明らかにした。個人保証は、憲法違反とする意見もあるなど、日本の会計処理の後進性を訴えた。

 

またマスコミの報道も表層的なものだけであり、「ガラパゴス状態」になっていると厳しく指摘した。ここの部分は、会場がプレスセンターであることなどから レジュメだけにして口に出さなかったが、中国銀行、住友信託銀行、大手法律事務所、マスコミの3極によって押し潰された実体を詳細に語った。

林原氏が書いて出版した「破綻 バイオ企業・林原の真実」(WAC)は10万部を超えるベストセラーになっており、すべて実名で書いたものである。書か れた金融機関や法律事務所からクレームが来てもおかしくないと思われていたが、これまでクレームは1件もきていないという。

また、粉飾決算とされた内容について質問が出たが、林原氏は売上の過大計上が30年間に300億円ほどあったが、年々これが減少しており、破綻とされた 時点で先の見通しがあったとも語った。一挙に計上して正常決算にする道もあったが、そうすると税金が過大にかけられてくる心配があり、徐々に減らす方向で 努力していたともいう。このあたりの事情は、講演会後の打ち上げ会で語ったものだ。

 

いずれにしても林原は、約700億円で長瀬産業に「身売り」され、事業はほぼ引き継がれているという。創業一家が追い出され、蓄積してきた実績がそっく り他人の手に渡ったことになる。また、多くの美術品や土地、建物など林原グループとその一族が所有していたものは、二束三文で処分されてしまい、この倒産 劇では、まるでハゲタカのように利得を手にしていった人たちもいたことになる。

 

個人資産を債務にあてるなど日本の未熟な制度は、産業の進展に大きな妨害要因として残っており、今後は社会問題として制度を見直す方向へ行かなければ、競争力のある国家や企業はできないし、ベンチャー企業も生まれにくくなる。

 

そのような問題意識を確認して活発な講演と討論を終了させた。

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