お知らせ

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100回記念シンポジウムの報告 (その2)

2013/06/27

冒頭に21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介

 シンポジウムの冒頭、21世紀構想研究会の馬場錬成・理事長から、1997年9月の創設から今日までの研究会の活動実績を報告し、今後も社会貢献を目指して討論や政策提言を目指す決意が語られた。

  まず、21世紀構想研究会の設立目的は、時代の変革で続出してきた課題を提起、討論する場を作ったことだった。IT(情報科学)の進展によって国、企業、社会のあらゆる場面での変革を予見し、知的基盤の強固な研究現場と産業振興の技術革新の実現をしなければ、日本は真の科学技術創造立国を確立できない。

 そのような課題を認識し、適宜、研究テーマを掲げて討論し、そこで得られた成果を社会に訴えて啓発しながら国の政策にも結びつくように活動する方向を目指して出発した。

 会員は現在およそ100人。主として有力なベンチャー企業、政府機関、大学・研究機関、マスコミの4極から集まっている。

 

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21世紀構想研究会の歴史と活動を紹介する馬場錬成・理事長

 

 下部組織として4つの委員会が活動

 21世紀構想研究会には現在、産業技術・知的財産権委員会(生越由美・委員長)、生命科学委員会(東中川徹・委員長)、教育委員会(銭谷眞美・委員長)、メタンハイドレート実用化委員会(平朝彦・委員長)が活動を行っている。

 それぞれ時代の要請を見ながら研究会を通して課題を認識し、政治、行政に対して成果を伝え、働きかける活動につなげている。

 過去の実績では、本会アドバイザーの元特許庁長官、荒井寿光氏を中心に度々、知財立国への制度改革や現場の課題を報告し、政府にも政策提言を行ってきた。

 また中国にも2回訪問し、中国社会の急速な進展と日系企業の現地での活動を視察した。さらに東日本大震災の前後には東北電力女川原発を視察し、原発の実情を学び、大震災の被災の現場を見る機会があった。

 

会員企業の栄枯盛衰

 21世紀構想研究会の会員は、有力なベンチャー企業の創業者に参加を求めたところに大きな特徴があったが、会員となった企業は成長するとは限らず、厳しい競争社会の中で大きな試練に立っている現状を知った。

 会員企業の中で、業績が順調に伸びた企業と事実上倒産した企業が交錯している。業績を伸ばした代表的な会員企業は次のような企業である。

 武蔵エンジニアリング株式会社、株式会社日本一、株式会社ガリレオ、株式会社発明通信社、株式会社高速屋、株式会社みかづき、株式会社グッドバンカー、株式会社ホトロン、ユーヴィック株式会社、株式会社東京大学TLO、バイオジェニック株式会社などである。

 会員になった多くのベンチャー企業は、特許など知的財産権を多数取得し、独創的な技術を武器に市場へ打って出たものであり、順調に業績を伸ばして上場した企業も3社ある。一部上場まで果たしたのが荏原実業株式会社である。その一方で上場した後に事実上倒産した企業が2社出ている。株式会社YOZANとシコー株式会社である。また知的財産戦略をもとに活動を続けるも業績不振で事実上倒産した会員企業が5社出ている。

 株式会社YOZANは、第3世代携帯電話(W-CDMA)用の集積回路の設計・開発を行い国際的にも脚光を浴びて2000年9月1日に株式をJASDAQに上場した。その後、半導体開発では安定的な成長が望めないとして電気通信事業者へ業態転換を行ったがうまくいかず事実上の倒産となった。

 シコー株式会社は、振動モーターを発明して携帯電話機のマナーモードを世界中に広げたものだが、円高、中国での人件費高騰、デリバティブ差損などの逆風に持ちこたえることができず、わずか3億9千万で中国の名もない中小企業に買収されていった。

 このような実例を知ることによって、21世紀構想研究会は国際的な技術開発競争、ビジネス経営の難しさを知り、分析・研究を行い、研究成果の一部は2011年度の日本知財学会で発表した。

 

 「たかが学校給食と言うなかれ」

 また、食育推進事業の一環として始めた「全国学校給食甲子園大会」 は、2013年に第8回目を迎えることになり、全国の学校給食現場では知らない人がいないくらいに有名なイベントになった。

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第7回学校給食甲子園大会に優勝した

愛知県西尾市立西尾中学校

学校栄養職員・冨田直美さん、調理員・三浦康子さん

 

 昨年の応募校は、全国から2271校(センターも含む)あり、年々参加校の数が増えている。これは単に学校給食の調理コンテストではなく、一般の人々にあまり知られていない学校給食の理解を高め、日本を背負っていく次世代の児童・生徒の栄養と健康を見守り、重要な使命を帯びて日夜頑張る栄養教諭、学校栄養職員、調理員を顕彰する大会にするのが主たる目的である。

 また、地場産物を供給する生産者、流通業者、保護者らとの交流促進にも役立て、食文化が一国の文化と密接につながっていることを理解しながら学校給食の重要性を社会に向かって啓発しているイベントである。

  「たかが学校給食」と言うなかれというのが私たちの主張である。学校給食は、食育推進の観点から、次のようなキーワードで研究を進めることができる。

  子供 栄養 健康 躾 教育 生活 地域 社会 国家 文化

学校給食から見えてくる課題は、国家観にまで広がっている。

 

 これからの21世紀構想研究会活動にご支援を

 世界的な産業構造の大変革の中で、日本はどのような国作りをし、どのように産業構造を変えていくのか。そのために知的財産戦略をどのように策定し推進するのか。

 これは国家だけではなく企業、大学・研究機関など日本全体の課題である。産業技術・知的財産権委員会では、近く知財改革の討論を開始し、日本の近未来の産業構造や知財戦略の再構築を模索しながら政策提言できるような改革案を作成したいと考えている。

 私たちは時代認識を明確に意識した社会啓発活動を続けていく決意である。

 これからもご指導、ご支援をお願いしたい。