お知らせ

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100回記念シンポジウムの報告(その4)

2013/07/19

 記念シンポジウムは、「希望ある日本のために何をなすべきか」をテーマに、5人のパネリストによる意見発表のあと、橋本五郎氏をモデレーターに討論を行った。

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 橋本五郎氏

 それではこれからディスカッションをしたい。論点を私なりに絞って、パネリストの先生方から話をお聴きしたい。

 最初に岩本先生からアベノミクス後の株式、債券市場の乱高下の話があった。これは最も切実な問題であり神のみぞ知るとあったが、まさに政治では制御不能という状況ではないか。岩本さんの指摘を踏まえてもう少し考え、分析を試みたい。塩崎先生はいかがでしょうか。

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塩崎恭久氏

 株式、債券などのマーケットは近視眼的に動き過ぎる。たとえば不良債権を処理しようとなった時、次に何をやろうかというときにマーケットの動きが大きくなることがあった。今回の株の乱高下のようにナーバスになっているときは、何か変化が起きるときであり、政治が制御不能だからではない。いずれ市場は落ち着いていくことだろう。

 毎日動いていることに一喜一憂しないで、トレンドとしてどうなっていくのかを見るべきだろう。株価ではなく本当の経済実態を見ることだ。日本はいい方向ヘと向いているのであり、基本的にアメリカも同じだ。アメリカの金融引き締めは、景気がよくなっていくからそうするのであり、マーケットは賢くないと思う。

 政治が不能なのではなくマーケットとはこんなものだ。時間が経てば一つの方向に向かっていくのであり、むしろトレンドとしてどうなるか、本当のところを見ることだ。日本はいい方向へ向かっているし、アメリカは経済もよくなっている。

 

橋本五郎氏

 大きなが流れとしては、成長戦略がきちんと実行できるようにならないといけないとよく言われるが、岩本さんは如何でしょうか。

 

岩本沙弓氏

 日本経済は、エネルギーの問題を抱えており貿易収支は赤字である。原発は止められ原油の輸入価格が上がっているので赤字が続いている。

 海外にエネルギーを頼っている場合には一方的に円安がいいのではなく、やはり円高はエネルギー源を安く調達できるのでいい。円高・円安のどちらがいいとか悪いとかの問題ではない。これまでは円安がいいのではないかという論調もあったが、ここはバランスを取ってニュートラルに考えるべきだろう。

 

塩崎恭久氏

 為替は双方向だ。これまではどう考えても円高が強すぎたかもしれない。しかしこちら側が決めることではなく、相対的なことで決まることだ。金融政策でどこまで変えられるかという問題があったが、今回、政策でこんなことができることが分った。あとはどのくらいがいいのか考えながらやることだ。

 

橋本五郎氏

 さて経済の問題はこのくらいで、次にリーダーはどうあるべきか、リーダー像をどう思うかというテーマに移っていきたい。藤嶋さん如何でしょうか。

 

藤嶋昭氏

 橋本さんがイギリスのサッチャー首相や大平首相についてのリーダー論を語った。これを聴いて、いま本当に真のリーダーが必要だなと思った。それがいま一番欠けているように思う。

 

橋本五郎氏

 大学の現場ではどうですか?

 

藤嶋昭氏

 大学は使命をきちんとわきまえて活動することが大事だ。日本が生きていくためには、資源がないから科学技術でしか生きていけない。今までは自動車、カメラ、電気製品とか工業製品でリードしていた。それがどんどん中国などに追い上げられてきた。こうなると日本は、ブレークスルーをやっていくよりない。私たちもその使命を担って次世代の素晴らしい技術を開発するよりない。大学としてはそれよりない。

 

橋本五郎氏

 中曽根内閣のときにがん撲滅10か年計画という政策を打ち出した。何年計画というのは、やはり必要ではないか。柳澤さんは、これをどう理解するか。

 

柳澤幸雄氏

 自分は環境問題が専門だ。中曽根政権の打ち出したがん撲滅10か年計画では、確かに人材の基礎が出来上がった。研究の基盤を作り若い人を育てるというのは、短期間では意味がないので10年規模くらいの期間で人の基盤を作っていくことが重要だ。いくつかの分野でやるべきだ。人が育っていく土壌を作る必要がある。

 

橋本五郎氏

その点で塩崎さんはいかがでしょうか?

 

塩崎恭久氏

 今回の成長戦略でも長期計画は見ている。ただ10年は長い気もする。例えばGNI (gross national income=国民総所得 )を増やすとか、名目3パーセント成長を目指すとか、10年目標でやっているが、しかしもっと短期間になるべきこともある。

 政府も今回、高低を付けて停滞から次の10年、再生の10年と言っている。10年は長いと思うが、他に短くていいものが多数あり政府も一つ一つに目標を定めてやることが重要だ。

今回のアベノミクスの特長は、総理が絶対ぶれない意志を持っていることが伝わっている。第1弾で農業とか医療とか雇用とかの課題でオンゴーイングするんだということだ。

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 岩本沙弓氏

 アベノミクスを肯定する立場というわけではないが、私はディーラーとして、いい状況があれば必ず悪い状況もあるはずだという常にリスクを考える仕事をしてきた。アベノミクスの最大の問題は、日本の経済状態の好転はアベノミクスだけなのか、ちょっと俯瞰して考える必要がある。 

 国内だけの要因ではなく海外特に米国の事情もある。アメリカはシェールガス革命になっている。たまたまアメリカ経済が立ち上がってきた、日本も一緒に立ち上がる状況になってきた。

 ドル・円レートでも、円だけの要因で動くのではなくドルの要因でも動いている。双方の要因がオーバーラップしていくことを分析して見ることが重要だ。アベノミクスの一番のリスク要因は消費税である。これまでも消費税を導入した後にさまざまな状況が派生的に起きている。

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 塩崎恭久氏

 97,98年の金融危機は、消費税が主因ではないと思っている。不良債権問題があり、借りたけど返せない状態になった。不動産屋さんだけでなく、そうでないところも同じになった。産業構造の転換がうまく言っていなかったという構造の問題があったからあのようなことが起きてしまった。

 それには金融機関も責任あったし、監督する当時の大蔵省にも責任があった。課題解決を先に送ってきた。みんなで先送りした。

 今回の消費税は合計5パーセントあげるのだから、これには備えて行かなければならない。財政で勝てるかとなると、それだけではなく国際競争で負けてきたという問題がある。

 どうもうまくいってなかったし、日本は負けてきた。その根本のところを日本はどうするのかが大事だ。景気が上がったら反動が必ずある。これをどうするかが大事だ。

 社会保障の先行きに不安を持ちならが、財政にも赤字垂れ流しでいくのでは経済健全化にならない。財政はある程度の方向性を出すべきだろう。

 

橋本五郎氏

 経済を議論したが教育の問題に移りたい。藤嶋さんが示した753を864に変えるには。いったいどこに問題があるのか。教師にあるのかそれとも文部科学省にあるのか。どこに問題があるのか。

 

藤嶋昭氏

 いま一番の重要なことは小学5,6年の理科教育をきちんとやることだ。小学5,6年生の理科はかなり難しい。小学校の教師は大体文系だ。これで全科目をやらないとならない。そこで5,6年の理科を専任の教員かあるいは理科に強い先生が教えてくれて、理科の面白さを子供たちに伝えることが大事だ。

 

橋本五郎氏

教師たちはどう思っているのか。

 

藤嶋昭氏

 小学校の先生は全教科をみるのだが、大体は文系の先生だ。理科の難しいのを教えるのは難しい。実験の面白さからやってもらうようにしないとならない。観察とか実験をやるだけなら簡単だ。それ以上のことをやることが難しい。そこをうまく教えることが重要だ。

 

橋本五郎氏

 現場では苦心のしどころだろうが、それではどういう風にやるべきか。柳澤さんいかがでしょうか。

 

柳澤幸雄氏

 理科をきちんと教えることはものすごくお金がかかる。さきほど、藤嶋先生はコンパクトな実験を見せてくれた。そのような実験を子供たちがやるには一人だけではできない。実験助手が必要になってくる。

 理科の専任の先生と同じ人数だけ助手が必要になってくる。そうするとその人たちの給料が必要になる。理科の教室の設備も含めてお金がかかる。

 たとえば枕草子を読むだけならお金はかからない。そころが、ある現象を教育するにはお金がかかってくる。これをどうするかが大きな課題だ。

 

橋本五郎氏

 退職された先生をバイトで雇うことはできないか。辞めたが一日中、家にいるのでは奥さんが一番困るだろう。それを敏感に察知した男性は、朝飯食うと公園に出かけて静かに時間をつぶしているらしい。これをバイトで雇えば元気が出てくる 学校では余り教え子に近づけたくないのだろうか。昔の話ばかりするからかなとも思う。

 

藤嶋昭氏

 東京理科大学は歴史的に数学と理科の教員を多数世に出している。いい先生を出すには学生のうちに指導することが大事だ。この教員の育成には、校長先生をやって家にいると困る人にお願いして指導者になってもらっている。理科大ではボタンティアに近い形でやってもらっている。

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 橋本五郎氏

 理科だけでなく、大学を出たばかりの若い先生がすべてに対応できるわけがない。一線を退いた人をうまく使うことは資源のリサイクルになるのではないか。もうちょっと積極的にやるとうまくいくのではないか。

 

塩崎恭久氏

 世界の100の大学のランキングを見ると日本の大学では東大と京大しか入っていない。 韓国は3つ入っている。自民党は10年内に10大学を入れることを目標にしている。

 そのために何をやるか。たくさんやることがある。3年前に成長戦略を作った時に、指標は実は国際化で負けている。しかし科学という指標でいくと上に行くがトータルで行かないとダメだ。日本の大学は外国の先生が少ないし、外国の学生も研究者の少ない。開かれていない。

 留学生の話もあった。希望する人が優秀なら全員、留学できるようにやりたいし逆に来てもうこともオープンにするべきだ。小中高といろいろ問題が出ているが、入試にも問題もある。日本では自分の大学で入試問題を作ってやっている。この形式は先進国ではあまりない。みんな共通テストでやり、後は論文とかアドミッション方式でやっている。日本は大学入試制度を変えないとダメだ。

 高校生が入試を目標にやると、大学入試後は燃え尽きた学生になりがちだ。入試の点数が高いからいいというものではない。それでは決まらない。高校でどういう社会貢献をしたのか、大学がアドミッション方式で取るときに評価の基準を作ればいい。そうすると高校生は、自分が地域で何をしたのか何を貢献したのかを考えるようになる。

 そのように入試を改革することは、とても大きな課題であると位置づけている。小学1年から英語を教科にしようとしたら、時の文部科学大臣が日本語もできないのに英語をやるのはダメだと反対した。結局、小学5年生からになった。

 英語をただ読んだり書いたりではなく、英語でコミュニケーションができる人を育てないとならない。コミュニケーションができないのでは社会に出ても伸びない。大学改革が大事だ。

 学長は選挙で選ばれるのではなく、理事会とか選考会が指名するなど大学のガバナンスを高める必要があるのではないか。教授会が学長の足を引っ張ったりすることがないようにするために、教授会の位置づけを本来の学長の諮問機関とするべきだ。

 選挙で学長を選んでいるとなかなかうまくいかないのではないか。我々国会議員も選挙で選ばれていると、あっちににこにここっちににこにこしないと選挙に当選しない。これでは大胆な改革などできない。

 ノーベル賞級の学者がなぜ日本で教えられないのか。逆になぜ、日本でノーベル賞を取った人が外国へ出ていくのか。そういうことを考えると大学のありかた、ガバナンスを考える必要がある。リーダーシップをとれる大学に期待している。自民党は改革のメニューを入れている。

 

橋本五郎氏

 大学は一見、民主主義的にやっているようだが結構無責任だ。恨みと嫉妬だけはある。政界とかなり似ているところもある。弾が後ろから飛んでくることもある。藤嶋さん、これはどうあるべきか。

 

藤嶋昭氏

 やはり理事会がリーダーシップを持って確固たる方針をもってやるべきだ。そうするとついてくる。堂々とやることが大事だ。さっきの大学のリーダーが必要だということと同じだ。

 

橋本五郎氏

 日本で最初にノーベル賞をもらった湯川秀樹博士の自伝の中で、父親は兄弟の中で一番ダメだと言われたという。ところが学校の先生は一番可能性があると見抜いて、ちゃんと大学に行かせるべきだと進言したという。

 先生が子どもをちゃんと見ている。そのことで一生が左右される。そうなると先生の役割は最も大切だと思っている。この世の中で、それぞれの一生を決めてしまうほどの役割がある。そうなるとそのような体制になっているのかという問題もある。東大に行くのも一つの指標かもしれないが、長い一生を決めるにあたっては、先生がその役割を担っていることは非常に大事だ

 

柳澤幸雄氏

 子供が生まれて誰に育てられるのか。時系列で考えると生まれてすぐは親だ。幼稚園から小、中、高校と先生が関与する。そして思春期になると友人の影響が非常に大きくなる。

だからどういう生徒集団、どういう学生集団を作るか、その中でどういう形でお互いに切磋琢磨するのか。

 それを教員が持っていないと、時間的に持っていないとダメだ。教員は教室で知識を教授するだけではない。ものの考え方人格の形成に大きな影響を発揮するべきだ。また、友人関係をどう意識するのか、それを意識させる学校運営が大事だ。

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 橋本五郎氏

 藤嶋さんは時代の雰囲気が非常に大事だと言った。昔、末は博士か大臣かと言ったが、あれは結構いいキャッチフレーズだ。いまはそれに代わるものがない。この雰囲気をどうやったら作れるのか。

 

藤嶋昭氏

 それは一人では無理だ。複数の同じ考えの人が集まって、なんかやろうとなるときにできる。やはり2,3人の同じ考えの人が来るというのが最も大事だ。明治時代もいろんな芸術でも同じ分野の人が集まって雰囲気を作って大きな力になった。

 

橋本五郎氏

 非常に大事だ。気持ちが国民全体の中に回ることが重要だ。宇宙探査機「はやぶさ」のときもそうだった。知識を血に対することだ。

 

藤嶋昭氏

 本を読もうという運動をやったきっかけは、川崎市の教育委員を10年やった経験からだ。教員採用試験をしたとき、面接者にこの1年間に読んだ本を言ってくださいと質問したら誰1人読んだ本を言えなかった。

 受験勉強の本を読んでいても一般の本を誰一人読んでいない。その人たちがみんな先生になる。これはひどい。自分を高めないとダメなので本を読もうというキャンペーンを始めた。

 大平正芳元首相はすごい読書家だった。あーうーと言っているが、一番の読者家だったのをみんな知っている。自分を高めることをしている人はみんな分かっている。

 

橋本五郎氏

 アメリカの元大統領のリチャード・ニクソンが、指導者とは、偉大な政治家とは、偉大な読者家であったとも言っている。塩崎さんいま政界を見ていて如何ですか。

 

塩崎恭久氏

 ま、人それぞれだと思います。今回まとめたものに知恵に対する話があったが、中間提言のなかで総理の科学顧問を設けよと提案している。英米では、チーフサイエンスアドバイザーがいる。

 政治家が科学をどのくらい受け入れる心を持っているか。原発事故が発生したとき、海水注入をやめろとか、あるいはベントを早く命令するとか、大きな声を出した総理大臣もいた。イギリスの人に聞いたら、イギリスの政治家はそのような科学的な判断に口を出す人はいませんと言っていた。原子炉の中の問題については、独立性をもってやならいとならない。

 下手な科学者の判断よりも政治家の方が判断は正しいと思い込んでいる政治家が多いのではないか。サイエンスアドバイザーを日本でもおけと言っている。しかし文部科学省が反対している。総合科学技術会議があるではないかと言っている。しかしこれは人を置くことだ。

 イギリスにはほとんどの役所にサイエンテフィックアドバイザーがいる。国務省にもいる。深い科学者として考えを持った人が科学的判断を提供している。そしてそれを受け入れる人がいる。事務官にも政治家にもいる。向こうでは専門的なアドバイスを受け入れることが事務官にも役所にも政治家にもある。

 

橋本五郎氏

 専門家が十分に機能を果たしているのか。そこだと思う。それぞれの立場もあるし意見もあるのだろうが、日本で言えるのは、みんな自信なげである。そうやっていままで原発をやってきたのかとなる。ここは藤嶋さんに聞きたい。専門家がこうやるべきだ、素人が口を出す問題ではないと言わねばならないのに、国民の目線になっているようだ。専門家がこれではどうするんだとなるがいかがでしょうか。

 

藤嶋昭氏

 それについてコメントするのは難しい。大体、原子力の専門家は同級生にいるが、あのときは優柔不断というか決断をちゃんと言わなかったように感じる。それが一番問題だ。 専門家はちゃんと言わないとダメだ。

 

塩崎恭久氏

 国会の事故調査委員会で問題になったことは、規制のとりこになっていたことだ。専門性があまりに高いので、専門性の規制のされる側にとりこになった。

 原子力安全基盤機構があって、専門家として組織を統合して、かつての保安院は基盤機構に下請けに出して作ってもらっていた。事故のとき基盤機構に100くらい提案あるとしていたが、保安院にいくと10くらいしか理解できなかった。官邸には1くらいしか届かなかった。

 これを解決するには、1つにまとめてこれを専門性のある力のあるものに変えていかないとならない。統合することに法律で決めている。しかし一部政府の人たちは熱心にしていない。早くやらないと原子力規制に対する信頼はいつまでたってもできない。能力がないと言われてはダメだ。

 

橋本五郎氏

 高校のときからいい人材を作っていくことが大事だ。大学でなく高校のときからということが大事なことでしょう?

 

柳澤幸雄氏

 英語、数学、国語という科目が入試にある。抜けていることで典型的なことがある。たとえば国語で漢字をよく知っている。教養があると思われている。数学がよくできる。この人は頭がいいと思われている。英語がよくできる、この人はスマートな人と思われている。

 日本の場合、大学で文系と理系に分ける。高校でも分けている学校がある。開成高校は分けていない。大学に行くとき、数学が苦手だから文系に行くという人が非常に多い。そうすると仕事に入った時にも数学的な素養が不足し、損をすることになる。

 高校で言うと、入学試験は教育の大きな流れを決める非常に大きな要素だ。小学、中学、高校とも指導要領に縛られているが、生徒は学校だけでなく塾でも勉強をしている。そうすると大学の入試はこういう問題である。それに合わせて子供たちは勉強している。莫大なエネルギーがそこに使われている。

 大学がどのような入試問題を出すかというのは、大学の社会的に存在する自分たちのメッセージなっている。いま入試改革が言われている。そのとき日本の入試では生徒自身が自分を評価しているというメカニズムがない。

 TOEFLなどは何回も受けられる。最大で7回受けられる。自己評価とその試験の評価の一致をはかることができる。何度も受けることができると自分はもっとできるのに点数が悪い。それならもっと勉強するとなる。また受ける限界かなとか判断できる。高校時代に判断できる。

 そのように生徒自身が判断できる。自己判断ができることが大事だ。是非とも入試改革をするべきだ。

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橋本五郎氏

 最後に株価はいったいどうなるのか。買ったらいいのか買わない方がいいのか。ということは受験勉強と何も関係がない。スポーツのあり様と株価のあり様とどう関係があるのか。

 

岩本沙弓氏

 難しいですね(笑)。大阪経済大で教えているが大阪には堂島という取引所がある。先物取引所がある。この取引を世界に先がけて開発したのは日本人である。

 実は日本人は市場経済に非常に敏感な国民である。大阪と京都にいち早く伝える旗振り通信、火の見やぐらを作って伝えた。旗振りの中継所は4か所ある。そこで旗振って伝達していた。

 大阪から京都まで旗振りで伝える中継地点が全部で4つある。旗を振るだけだが、どのくらいの時間がかかると思うか?

 

橋本五郎氏

?・・?・・、3時間くらいだろうか。

 

岩本沙弓氏

 実は4分でできていた。旗を振り、双眼鏡で眺めて情報を収集した。いまNTTの電波塔が建つ場所はもともと旗振り通信の櫓が建っていた場所だと言われている。日本人は創意工夫する国民だ。相場も、もともとそうだった。

 いわき市にタンガロイという会社がある。大震災で100パーセントダメになってから1か月で回復させた。底力のポテンシャルがある。底力があるのだから、もう少し自信をもってやると全然変わると思う。

 

橋本五郎氏

なるほど。そのポテンシャルに期待してこのシンポジウムを終わりたい。

 

 

馬場錬成・21世紀構想研究会理事長の閉幕挨拶

 5人の先生方の専門性の高い思索からの意見が述べられ、一時は話が発散してどうなるかと思いながら聴いていた。アベノミクス、財政金融問題、そして広く教育問題へと話題は広がり、日本のためにどうするのかというフォーカスでは一致していた。

 5人の先生方が明確にそのようなメッセージで語ったわけではないが、私なりにそのように感じた。ご発言の中で共通だったことは、日本にはリーダーが不足している。今こそ確固とした信念をもった専門性の高いリーダーが必要だ。

 国を建てるのは教育である。教育は教師の在り方、教育制度の在り方、入試のありかたなどで各論が出ていたがリーダーといい人材を育てていく教育が一番重要であることを5人の先生が角度を変えて発言していた。

 日本と日本人は、この150年間に世界でも稀有な進歩を遂げた。日本と日本人はきわめて優れた民族の1つだ私は考えている。これまでの実績と民族の資質を認識し、これからも誤りなきように歩いて生きていきたと思う。世界に貢献できる人類の福祉に貢献できる日本と日本人でありたいと思う。

 21世紀構想研究会100回記念シンポジウムは、実り多い討論に終始して終了した。5人の先生方に篤くお礼を述べ、改めて盛大な拍手で謝意を表したい。

 有難うございました。

(文責・特定非営利活動法人21世紀構想研究会事務局)