南川さんは、歴史的な人物や出来事を息長く記録撮影して集大成する日本を代表する写真家です。これまでグレアム・グリーン、エド・マクベイン、フォーサイスら世界の有名な推理作家の書斎の風景を撮影して出版した「推理作家の発想工房」(文藝春秋社)、そしてミロ、ダリ、キリコ、シャガールといった世界の画壇に君臨する巨匠たちのアトリエに入り込み、そこで芸術活動する風景を撮影して出版した「アトリエの巨匠・100人」(新潮社)は、国際的にも評価されている代表的な作品です。
世界の人物や歴史的文物、文化の痕跡などを息長く記録写真として蓄積して発表するという、世界で誰も手掛けていなかった独自の境地を開いた点で、大変ユニークで価値ある活動と思います。
これまでは主としてヨーロッパを拠点にして活動していましたが、近年は日本の伝統文化の撮影にも意欲を燃やしており、熊野古道の記録に続いて式年遷宮の記録へと日本文化の原風景を撮りつづけています。
いずれ式年遷宮の集大成が刊行されるでしょう。南川さんを支援しながら新たな作品を期待したいと思います。