お知らせ
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秋田シンポジウム速報「跳びだせ世界へ秋田県」
- 2014/06/23
「跳びだせ世界へ秋田県」
主催 特定非営利活動法人21世紀構想研究会
後援 秋田県、秋田市、秋田県市長会、秋田県町村会、秋田商工会議所、秋田県中小企業団体中央会、秋田銀行、北都銀行、秋田信用金庫、秋田魁新報社、秋田放送、AKT秋田テレビ 、
AAB秋田朝日放送、エフエム秋田 、BS朝日、読売新聞東京本社
協賛 武蔵エンジニアリング株式会社、株式会社日本一、秋田銀行、工藤電機株式会社、創英国際特許法律事務所、株式会社ガリレオ、いおん特許事務所、一般財団法人建築行政情報センター、秋田商工会議所、ユーヴィックス株式会社、萩原電気株式会社、北都銀行、秋田信用金庫、AAB秋田朝日放送、新政酒造、バイオジェニック株式会社、株式会社グッドバンカー、株式会社エヌシーエスコミュニケーションズ
開催日時 2014年6月14日(土)
開催場所 秋田キャッスルホテル
モデレーター
橋本五郎(読売新聞特別編集委員、ニュースキャスター、21世紀構想研究会理事)
パネリスト
銭谷眞美(東京国立博物館館長、元文部科学省事務次官、21世紀構想研究会顧問)
吉村 昇(東北公益文科大学学長、前秋田大学学長、秋田大学学事顧問)
三浦廣巳(秋田商工会議所会頭、秋田日産自動車会長)
生越由美(東京理科大学知財専門職大学院教授、21世紀構想研究会理事)
橋本 先に出版された「中央公論」6月号、7月号によると、2040年までに何もしなければ日本の市町村は半分になってしまうという報告が掲載され、大きなショックを与えています。秋田県も同様の減少率で24市町村がなくなると出ています。地方の振興がいま、重要な政治課題になっている。
ところで安倍政権は、1年経っても支持率が下がらない。最近の内閣では非常に安定している。しかし不満がある。地方の再興という政策が成長戦略の中に入っていない。これは大きな問題だ。
過去の内閣を見ると、田中内閣、大平内閣でも日本の地方振興という政策を重視してきた。故郷をどうするかという視点があった。これをいま、どうすればいいのか。
まず大事なことは、いま地方に住んでいる人たちが何かをしようという発想や行動がなければならない。地方の再生可能にするためには自分たちで考えて行動を起こすということが大事だ。
今日のシンポジウムは、地方再生を考える一つのきっかけにしたい。この秋田に生まれてよかったとするにはどうあるべきか。そのような論議を期待したい。
それではこのシンポジウムでパネリストの方々に秋田県を活性化する発想でそれぞれの思いを語っていただきたい。地方を活性化するきっかけにしたいと思います。銭谷さんから順にご発言をお願いします。
銭谷 昨夜は秋田市に帰り実家に泊まった。秋田で生まれ育ったが、高校を卒業後は、秋田を離れてしまったが秋田を心から愛している。
本日のシンポジウムのモデレーターを担当している橋本さんは、高校の先輩であり、先年、東京で50年前の秋田の映画「17歳は一度だけ」を観る会があり、 そのとき橋本さんの講演を聞いて感動した。橋本さんは、故郷を思う気持ちを語り母親の話をしたときには会場の多くの人が感動して泣いていた。そのような縁 で、本日のパネリストになった。
さて、いま私は日本で一番規模が大きく一番古い歴史を持っている博物館の東京国立博物館の館長をしているが、ここには多くの国宝や重要文化財が収納されており、随時展示もしている。
秋田県関係の重要文化財を調べてもらったところ、縄文時代の土器から始まって江戸時代の秋田城に関する文書、後三年役の絵巻物、佐竹氏の時代まで文書や資料が多く保存されていることを知った。秋田は江戸時代から交通の要衝にあり、拠点になっていたことが分かった。
さらに当時は鉱山、油田という産業がありそれに関連する化学工業もあった。そのような歴史的な産業や古くからある文化を見直す機会を持つことが大事ではないか。
吉村 秋 田大学学長から酒田にある東北公益文科大学学長に転出した。鳥海山を見ながら酒田と秋田を往復する生活になっているため、山形県と秋田県を比較するように なった。山形県民は、よく働き競争して活動してきたようだが、秋田は食うに困らない人が多いせいか、のんびりしている。
秋田大学の歴史を見ても、意欲的に学部を増やすようなことをしなかった。秋田はほんわかした土地であるが、これを考え直す時期になってきた。東京は、オリンピック開催もありさらに一極集中が進むだろう。リニアモーターカーにしても常に東京を中心に考えている。
アメリカは各地で栄えており一極集中にはなっていない。大震災後の復興も太平洋側が優先的になっているが、日本海側も考えてやらないと均衡ある発展にはならない。
三浦 このシンポジウムの冒頭に橋本さんから重い発言があった。何もやらなければ、2050年には秋田県の人口が70万人になると言われている。知恵を出してや ならいとこうなってしまう。それではわれわれは、何をやるのか。秋田商工会議所でも、中小企業経営者らと現実をしっかりと認識し、いろいろな課題を話し 合っている。
企業経営でもそうだが対前年実績を割らないことが一つの目標になっている。しかしそう簡単にはいかない。それでも最低限、これだけはやろうという目標を立 てている。それは人口減少への対応でも同じだ。秋田県の人口は100万人を割らない、減らさないという目標にこだわりを持つことが大事だ。
人口が増えれば企業が増えるし雇用者が増えることは成長することだ。首都圏一極集中を解消するという構想があったが、いつの間にか消えてしまっている。首都圏に大地震が発生したら甚大な被害が出る。地方に首都圏の機能を分散してリスクを軽減するという考えがあるべきだ。太平洋戦争のときは、都会から地方へと疎開した。これを見習って企業のバックアップは地方へ持っていくべきだ。地方に分散することを考えるべきだ。
生越 産 業史を振り返ってみると、農業社会から工業社会になりいまは知識社会へと発展してきた。社会の中心価値の変遷をみると、無形資産と有形資産の割合が劇的に 変化した。1978年には無形資産は17パーセントだったものが20年後の1998年には69パーセントになっている。
昨日から秋田県庁などでご当地の産業や地域ブランドについて取材しましたが秋田県にはたくさんのブランドがあることが分かりました。これを生かす方策がいろいろ考えられると思います。
世界競争に生き残るためのポイントの一つは、地域にしか存在しないものとか地域に行かないと味わえないもの、地域でしか作れないものなど地域の固有化が要になる。ウエブ情報でみても秋田県には多数の食文化がある。「いぶりがっきー」とか「ぷれすてなまはげ」などユニークな食品も開発されている。
ポイントの2つ目は、価値と価格の多層化時代を認識して対応することだ。ハンバーガーも100円から2000円まであって、高くても付加価値があれば売れ る時代だ。ポイントの3つ目は、使えるものは全て使うという発想だ。曲げわっぱ、秋田八丈など名品があるので活用方法を広げたい。
秋田には多くの強みがある。竿灯、なまはげ、かまくら、ハタハタなどや横手市増田町の内蔵など文化資本である地域資源、歴史資源、コンテンツ資源など多数ある。今後の展開によって楽しみな県である。
橋本 大 変素晴らしいご意見をいただきました。銭谷さんからは、秋田には歴史的に古い文化の資料が多数あることが報告され改めて再認識したものです。一極集中は、 なぜそうなるのか。もう一度私たちは考える必要があるようです。新幹線もすべて東京から始まる。大震災が発生したらいったいどうするのかという課題もあり ます。
一極集中が改められないと職を求めて多くの人材が東京に行くことになる。雇用の問題を地方で考えると大変な課題がある。いまは、大学を卒業しても正規社員 として就職できない人がかなりいる。これでは若い世代がかわいそうだ。産業界は雇用問題では自分で首を絞めているような感じもある。
吉村 日本の発展をみると西から発展してきた。東北はどうしても遅れてきた。秋田も工業と農業しかなかった。アメリカは一極集中ではなく、歴史的に分散して発展 してきている。ボストンから始まって北から南へと発展した。シアトル、ロチェスター、ニューヨーク、デトロイトというように産業の種類によっても固有に発 展する都市が変わっていった。
日本は東京から南へ発展した。半導体の九州、自動車の名古屋という具合だ。山形県には売上100億円以上の企業が数社あるが秋田県にはない。これからは秋 田県の企業で世界へ羽ばたくような企業を育てなければならない。その意味で大学の責任は重い。これからは産学官で連携して発展する時代だ。
三浦 最近は企業の環境が変わってきた。本社はどこにあってもいいという時代になってきた。日本は中小企業が95%と言われている。秋田は中小企業ばかりだが、一流の技術を持った中小企業が秋田には多数ある。
秋田はまだまだアピールが足りない。親はどうしても子供の就職先は大企業がいいと思っているが、魅力ある中小企業をアピールしてひきつけることが肝要だ。 商業地の地価を考えると、東京は秋田の36倍も高い。秋田には付加価値を付けて、よりいい地域であることをアピールしていくことが大事だ。
橋本 今日のシンポジウムの見出しはどうなるか。「東京の一極集中を見直す」とならないか。それには地方は何をなすべきか。東京でなく自分の住んでいる地方都市の魅力を見直し、外から見ても魅力あるものに見えないとならない。
鳥取県の知事が「わが県にはスタバはないが砂場がある」と語っていた。鳥取砂丘を砂場と言ったものだが、マイナス面と考えないでプラス思考で考えることが必要だ。
生越 徳島では刺身のつまに使う葉っぱで収入があがった地域がある。山奥の葉っぱを生かすことで年収がみな1500万円から2000万円になった。こうなると地方に対する若い人の見る目が変わってくる。
またブランド豚肉を売り出した平田牧場のように、豚作りで独自の産業に発展させている例がある。農業はこれからハイテク化が進むので逆転の発想と成果が出てくることが期待できる
橋本 秋田県の人口が減少すると心配しているが、秋田は100万人を維持するということにこだわるべきだ。卑近な例で恐縮だが、読売新聞は1000万部を何が何でも維持しようと目標を掲げて頑張っている。そのように目標をきちんと立てないと人口も購読者数も維持できなくなる。
高齢化率が高いと言うが、それは長生きする率が高いということになる。マイナス思考ではなくプラス思考でいきたい。がんの死亡率は、秋田県が最も高いと言 うが、がん研究者に言わせるとそれは長生きする人が多いからだという。長生きすればがんで死亡する人が多くなるからだ。
また地方の文化の良さもアピールして都会の人に認識してもらうことも必要だ。
銭谷 橋本さんがいま言ったことは私も言いたかった。高齢化率日本一は長生きしているからである。子育て環境日本一にすれば、人口を100万人は維持できるだろう。米国は企業の定年制がない。これを見習っていくこともいいのではないか。
秋田は北緯40度だが、世界地図をみると北緯40度の都市は、北京、ニューヨーク、スペインのマドリードなど世界の文明圏として重要な都市になっている。
健康で長生きする健康寿命には、文化が重要だ。50年前に地域にいた人に来てもらい、いろいろやってもらうこともいい。秋田大学は鉱山学部からさらに発展 して国際資源学部を作った。これこそ秋田の特徴を生かしている。就職すると秋田を離れると言うが、若い学生が4年間秋田にいるだけでもいいという考えが あってもいいのではないか。
橋本 隣の県に移った吉村さんは、秋田県を隣から見て分かる点があると思う。どこに問題があるのか。
吉村 秋田は米に困ったことがない。これに比べ他の県や地域はたくましく生きてきた。秋田大学も昭和24年に学芸部、鉱山学部から出発した。農学部も工学部もな かなか作れなかったし、今も農学部はない。昔の学長や事務局長に責任があるということも言われているが、それはさておき秋田はゆったりと生きてきたという ことではないか。
橋本 なるほど、秋田は豊かであるがゆえたくましさがなくなった。暮らしずらい方がエネルギーを生み出すことになるかもしれない。
三浦 秋田は農業で発展してきた。だから他人と違うことはやらない。しかしこれを打破しないとならない。ベストの計画を立て事業経営者はチャレンジしないと伸びない。可能性のあるものを応援することも大事だ。
岩手は手を引っ張るが秋田は足を引っ張るという言葉がある。秋田は人がやらないことはやらない。リセットして、おれもやるからお前もやれということにならないと可能性が出てこない。
ベンチャー企業を立ち上げ、時間がかかるだろうが新しい企業を育てていくというように仕組みを変えていくことが必要だ。他人の邪魔をしないことだ。応援出来ない人は、静かに見守ってほしい。秋田は自分たちがプレーヤーとして頑張っていくよりない。
橋本 行政の役割も大事なのでこれを考えてみたい。行政は積極的に秋田のいいところ魅力を見つけ、それを伸ばしていく必要がある。このシンポジウムでも秋田のい いところがたくさんでてきた。農業も大事だし秋田を高齢者の県にするというのもいい。2つとか3つに絞って施策をすることだ。
生越 各地に行って取材をすると、リーダーはよそ者、若者、馬鹿者と言われている。たとえば宇都宮餃子は、長老がうまく育てた。行政は安心して挑戦できる環境を作ることだ。
橋本 行政の役割の重要性が出てきた。さて時間も少なくなってきたので、最後にこれだけは言っておきたいという発言をお願いしたい。
銭谷 冒頭にも言ったが文化と観光とは別物ではない。文化は人が来なくても育っていく。文化と観光は資源である。その良さを知ってもらうことが重要だ。
吉村 過去からの脱却が大事だ。安いカネで大量の消費をしてきた。それをやめて日本のオリジナルを作ること、できることをやるということが重要だ。
三浦 秋田にはいいものがたくさんある。いいもの、悪いものなどと言い訳しないで秋田のいいものを伸ばすことだ。親父の生き方を経営に生かしていくことが最も大事だ。
生越 秋田の生活の豊かさをみんなに見せることが大事だ。日本は介護技術が遅れている。そのような産業を秋田から起こすことができないだろうか。
橋本 外から来ないとカネが落ちない。そのためにはちゃんと自分のよさを見つけて強固なものにすることだ。秋田に行くとすごくいいというものがほしい。改めていいところを再認識してもらう。
秋田駅に降り立つと私はちょっと不満だ。県庁所在地だが秋田だなあというもが見えない。まだ盛岡はある。隣の芝生はよく見えるというのと同じかもしれないが。
いいところを伸ばし悪いところを逆に利用する。発送の転換だ。東京に住んでいても孫が秋田へ行きたいという時代と土地にしなければならない。
「中央公論」で衝撃的な報告と課題提起がされたが、これを乗り越えていくことを秋田に期待していシンポジウムを終了したい。
(文責・馬場錬成)