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日中科学技術協力は進めることができるのか? 報告2

2021/09/19

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基調講演の1 沖村憲樹

日本人の印象をはるかに超える中国の躍進

 中国の科学技術の総力は、日本の人たちが抱いている印象を大きく越えて、大学研究、産学共同政策、人材育成、国際化の促進、そして予算規模、すべての面で急成長し、完全に日本を追い抜いています。こうした厳しい現実を紹介しながら、これからの中国がどこまで飛躍するか、一方の日本の課題、そしてなぜ、両国は科学技術面で協力を進めなければならないか、お話ししたいと思います。

 科学技術庁(現文科省)、科学技術振興財団(JST)での仕事を通して、私は中国の科学行政、研究担当者らとの交流を深めなければならないと痛感、2002年にJSTの北京事務所を開設、2006年には中国総合研究センター(CRCC)を設立しました。初代CRCCセンター長を馬場錬成先生にお願いし、また倉澤治雄先生にも参加して、活躍いただいた経緯があります。

 中国の大学の変容

「世界の大学・トップ200ランキング」というものがあります。2004年に日本が11校、中国は5校がリスト入りしていましたが、2021年のランキングでは、中国が15大学、日本はわずか2大学と、大きく逆転しています。

米・タイムズが、中国の大学の現状を報告していますが、研究と教育だけではなく、大学は極めて多彩な機能を抱えているのです。「サイエンスパーク」、「大学の校弁企業」、「インキュベーター(起業支援)」、「技術移転センター」、それから中国の科学技術政策の重要分野を、研究所を建てながら推進する「重点実験室」、これは中国に700くらいありますが、こういうものを総合的に持った大学になっています。

こうした大学への進学率は現在、51.6%、日本の進学率に近づいていますが、その成長ぶりはすさまじく、5年間で10ポイント増。2025年の目標は60%で、間もなく日本を追い抜くと思います。学生数も、大学生が5年間で20%ポイント増えて、3031万人。大学院生は5年間で55パーセントも増えて、286万人おり、この勢いでは、優秀な中国人が世界中にあふれるのは確実です。

 大学のサイエンスパーク

現在、中国の大学115か所のサイエンスパークがあります。ここに1万127の企業が参加し、売上が325億元といいます。主要な大学の大半に、いずれも立派なサイエンスパークがあります。

校弁企業とは、大学の子会社です。一番大きな北京大学の「方正」は、2兆2000億元(約37.4兆円)の売上高。清華大学は1兆3000億元(約22兆1000億円)の売上高と、巨大な子会社を各大学が持っており、552の大学が計5279のベンチャー企業を抱えます。

その中で、2004年に設立された清華大学の「TUSH」という校弁企業をご紹介します。

ここは、サイエンスパークも兼ねており、77万平方メートル、丸ビル5個分の建物を備え、資産が3.2兆円、傘下企業は800社以上という、巨大な組織になっています。全国の80都市に300以上の拠点を持ち、5000社以上がこの施設に入ってきている。さらに海外16か国にも拠点があって、60以上の大学と協力しています。日本は東京大学の産学推進本部とベンチャー育成の協定を結んでいます。

(つづく)